夢現の世界
「まあそうだよね。でも全てを説明する時間は無い。とりあえず要点だけ。いま君の上に乗っかっているのは、君の知っている女の子じゃない。人の夢の中に入り込んで、人の魂を食らう“ユメクイ”って化け物さ。こいつらは人の夢の中に入り込んで、質問をする。そうすることで、夢を “観”ている人を夢の “中”に引きずり込むのさ。そして、夢の中に入り込んでしまった人間の魂を捕食する。そして食べられた人は植物人間に良く似た状態になる。ただ植物人間と違って二度と回復することはないけれど。」
―あの子の記憶も化け物の作った幻想だったって事?
「詳しく説明したいところなんだけれど、残念。時間が無いんだ。現実の君が目を覚まそうとしている。続きはまた今度説明するよ。君が覚えていればね。それじゃ、ちょっと君の上のユメクイの始末をするから目を閉じて、ちょっとグロいからさ。」
そういうと、キョウジは手を上に挙げた。手の上の空間が歪んで、刀が出てきた。キョウジはその刀をつかみ、鞘を抜いた。青白く刀が光っている。僕は改めて自分の上に乗っている化け物に気がつき、これから起こるであろう事を理解。目を閉じた。直後、絶叫とともになにか生暖かい液体が体を濡らした。
いままで経験した中で最悪の目覚めだった。汗でパジャマはびっしょり濡れ、体が鉛のようにだるく、目は腫れ上がっていた。時計を見ると5時30分。母親もまだ起きてない時間だ。でももう眠ろうという考えは出てこなかった。
「いよーす相棒!今日もいい天気だな!」
ヨウスケがやけにうれしそうに話しかけてきた。
「朝からテンション高いな全く。」
僕がボヤくと、ヨウスケは回りを確認した後ささやいた。
「ほら昨日カオリが転校生の事どう思っているか聞いてくれただろ?あれで俺本当に安心したんだよ。だって転校生めっちゃ格好良かっただろ?本当サンキューな。今度なんか奢るよ。」
あまりに真剣な顔でこんな事を言うから思わず笑ってしまった。世の中平和だとしみじみ思った。
「おっはよー!なになに?なんの話してるの?」
カオリの元気な声にヨウスケはびくっと飛び上がった。
「べっ、別に何でもねーよ」
「えー気になるなその言い方。もったいぶらないで教えてよ〜」