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オレたちのバレンタインデー

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 ご覧になったことがあるでしょう、バレンタインデーに、校内で華やかかつ幸福な会話が交わされる一方、机に突っ伏し静かに一日が過ぎるのを待つ男たちの姿を。本来、彼らはそんなことで落ち込む必要なぞないのに……大衆の熱狂に流され、劣等感に打ちひしがれる。
 しかも我が校では、バレンタインデーがちょうどテスト期間です。喜ぶ輩も、悲しむ者も、テストに身が入らない」
 いや、それは気の持ちようだろ、と言いかけたが、自らをかえりみて、口を閉じた。中学生の頃、オレは平静でいたか? 何かしら心がうきうきして、特に中三の時など勉強に集中できず……うーん。
「えっ? バレンタインデー?」
 K子の腕の力が急に抜け、体が離れるのが分かった。
「確かにそうだな」
 む? Teacher.Aが……同調した!?
「ならば。これからは学校でバレンタインを規制しよう。どちらにしろ、生徒会は廃止だ。まだまだ、大人に管理してもらわねばならぬ年齢なのだよ、キミたちは」
 いったい何を言っているのか。学校には生徒のプライベートまで口突っ込む義務も権利もないだろう。バレンタインがなくなったら、他の男どもはともかく、このオレはどうなるのだ。
「いい加減にして下さい!」
 Oが突然叫んだ。その場の全員がびくりと固まった。彼は普段物静かで、あまり怒鳴るような奴ではない。オレでさえも虚を突かれた。
「どちらの主張も正しいと思いますよ、その一面ではね。でも、僕たちは押し付けられたくない。自分たちで選び、行動したい。バレンタイン云々なぞ、意識すればどうにでもなるでしょう。なぜ生徒会や学校が世話を焼く必要があるんですか。それは……単にあなたたちの個人的なエゴじゃないか」
 緊迫した沈黙が走った。
 次の瞬間、Iは、うわあぁっと唸りとも叫びともつかぬ声を上げてOに飛び掛かった。拳が振り上げられる。オレは防ごうと手を伸ばしたが――駄目だ! プリントの山に挟まれて動けない!
「I!」
 その時、Zが青ざめた顔でよろよろと割って入った。Iの拳がその右頬をヒット。不健康そうな体躯が吹っ飛ぶ。
「か、会長!?」
「アハハハッ。ボク以外の者の無意味な暴力は許さないよ」
 力なく半身を起こして、Zは笑う。