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オレたちのバレンタインデー

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17 終幕―オレ


 諦念だ。諦めるしかない。もう終わりなんだ。
 オレは盤を見てそう思った。手加減していたつもりが、いつの間にかオレの白が大部分を占領している。会長のただでさえ青白い顔が紙のように白くなり、びくびくと不規則な痙攣さえ催し始めた。
 しかし、諦めの悪いオレ。残り数ヶ所。一応会長Zの顔色を窺って、
「会長、パスしたいのだが」
「勝利を目前にして、何を渋っているっ」
 会長は即座にはねつけた。
 Iが耐え切れなくなったように、体を折って笑い出した。
「くくくっ、どうしたのですか問題児クン。次を打ちなさい、さあ、早く」
 くそっ……。
 さよなら、オレのバレンタインデー、オレの青春。O、K子……!
 オレは、最後の白に手をかけた――
「やめてっ!!」
 ――背後で聞き覚えのある金切り声と、何かの崩れる音がし、視界が白やら灰色やらで乱れた。相当な重量の何かがのしかかってくる。な、なんだこれは。何が起こった。
 IとZが紙の山に埋もれている。よく見るとオレもだ。腰までしっかり紙に侵され、身動きが取れない。
 突然、後ろから、何者かに抱きしめられた。爽やかなリンスの匂い。
「馬鹿っ。なんで、いつもこうやって、自分から危険なことに飛び込むのよ!」
 K子? さっき、オレの軍団が追い払ってしまったはず……
「まったく、こんな所にあったのか、生徒会室は。頻繁にプリントを破棄しに来ながら気付かなかったぞ。灯台もと暗し、というやつだな」
 自嘲気味に響いた声はTeacher.Aか?
「脆いものですね、所詮。高校生がすることなんて」
 皮肉そうな最後の声の主に、IとZの顔が引きつった。
 O……!
「キミたち、馬鹿げたゲームは終わりにしたまえ」
 Teacher.Aは授業中と全く同じ口調で淡々と話す。
「本部という頂点に溺れ、自分たちの気に入らないものを排除しようとは。いやはや、やはり生徒会活動とは、生徒になんらよい影響をもたらさない」
 キノコ頭が震えた。胞子のように、フケが幾らか空気に舞う。
「っ……先生っ、俺たちは生徒のために尽くしてきました! それに間違いはないはずです。バレンタインなど、生徒の健全な学校生活の妨げに他なりません。