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オレたちのバレンタインデー

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14 開戦―O


 本部で待機していた僕たちのもとへ「反逆者」が引き立ててこられたのは、バレンタイン掃討作戦を開始して約一時間経った時だった。
「……やはり」
 巨漢にのしかかられじたばた暴れるそいつを腕組みして見下し、Iは笑った。
「そうではないかと思っていました。愚者は必ず尻尾を出します。ね、会長?」
 青白いZは威張り腐った顔で巨漢に聞く。
「どのような罪状か」
「はい。パトロール中、チョコレートらしきものを大量にかごに積んだ自転車の女を発見し、取り押さえようとしたところ、隊長にチョコレートらしきものを差し出したのであります。隊長はあろうことか、それを……」
「包装ごと食べてやったんだ」
 ざらざらした声が、苦しそうに、しかしはっきりと続けた。
 僕は今更ながら、この問題児の無鉄砲さにため息をつく。
「もう隠しようがありませんね」
 Iは汚らしい薄笑いを浮かべた。
「どうします、会長?」
 Zは既に長机の上にオセロ盤を用意していた。
「勿論、この場でオセロだ! オセロでボクに勝ったら、その腕前を讃えてとりあえず半殺しで見逃してやってもいい。負けたら――」
 握り拳に親指を立てると下へ向けて大きく振った。
 あいつは一瞬顔を強張らせた。だがすぐにいつもの憮然とした表情に戻る。
「いいだろう」
 上の重しが退いた。あいつはゆっくりと長机に向かう。僕の前を横切ろうとする刹那、すっかり丸聞こえだとは思うが、僕は声をひそめて言った。
「勝っても負けても――」
 あいつは口に出して応えることなく、下手なウインクをすると、Zの反対側に座った。