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オレたちのバレンタインデー

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13 消えた問題児―Teacher.A


 さて放課後。問題児を見張ろうと思っていた矢先に一件電話が入った。かけてきたのは田舎に住む私の父で、なんでもハゲが治る魔法の頭ツボ押しなるものを贈呈してくれるという。早く行かねばとうずうずしながらも、朦朧しかけた父の話くらい聞いてやろうと仕方なく相槌を打つこと一時間。やっと話し足りて満足したらしく、一方的に電話を切られた。とてつもない虚無感に苛まれがくりと膝を折ったところで、職員室の窓から望む校門に突然黒い影が入り込んできた……と思ったら、それは本校生徒の集団なのだった。
 ん? 一番前、大勢に取り囲まれて両腕を押さえられ、じたばたもがいているのは――
 問題児ではないか!
 そうか、あいつめ、私が手を下すまでもなく、自ら失態を犯し取り押さえられたか。
 私は玄関へ走った。しかしいざたどり着いてみると、忽然と集団の姿は消えている。
 代わりに、突如として少女が一人、自転車で飛び込んできた。
「な!?」
 空気がズバッと私の目の前を走った。
 キッと急ブレーキをかけ、そのまま下駄箱の脇に自転車をとめようとしている。
「おいっ」
 期待が外れたばかりか少々訳の分からない展開だ。私は思わず苛立った。
「キミ、どういうつもりかね? ここは男子校だぞ。しかもそれ以前に、玄関まで自転車を乗り回してくるとは非常識極まりない」
 少女はここに至って初めて私の存在に気付いたようだった。
「……あっ、はっ、すいません」
 だが心ここにあらずという表情で、口早に私に聞いてくる。
「あいつはどこへ?」
 あいつ?
「あいつですよ、あの不細工で遠慮がなくて自惚れ屋で頭の回んない馬鹿!」
 ……問題児か?
「やつなら、まんまと取り押さえられていたよ。どこへ行ったか、玄関から入ると思ったのだが」
 少女の顔がさっと青白くなった。
「捜さなきゃ!」
 遠慮なく、白いスニーカーでずかずかと上がり込む。
「おい、キミっ」
 校庭の土が点々とコンクリートの床に擦り付けられていく。
「どういうつもりかとさっきから聞いているだろう、答えたまえ。もしかしてあいつの仲間か?」
 なおも返事がなく、教師に対する昨今の生徒の無礼をひしひしと感じていると、
「これ」
 少女が突然振り向いて、私にピンク色の包み紙で包装された何かを突き出した。
「え?」
「プレゼントです」