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Future Star

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そこまで聞いて、二人は知り合いだったことに私は気づく。
それからすぐに、二人とも日本人で名家出身だから、知り合いだったとしてもおかしくはないし、二人の仲が悪いのもどこにでもあるような家同士の派閥か何かだろうと私は勝手に推測した。

「その借りなら20分前に返したところだ」

赤髪の彼は鈴音さんが入ってきてから初めて口をきいた。

「ああ、お前には世話になったな」

鈴音さんの目元が少し緩む。

「不思議な繋がりがあるものだな」

彼は私と姫宮さんを交互に見て言う。

「ちっとも不思議じゃない。
必然的だったんだ。
この出会いはな」

帰るぞ、ともう一度私に声を掛け、もう勝手に入ってこないで下さいね、という史里さんに、この家になら鍵が掛かってても入ってやるよ、と応じて鈴音さんは部屋を出る。
慌てて後を追おうとした私を赤髪の彼は簡単な手のゼスチャーで引き留める。

「お前、あんまりぼうっとしてると、気づいた時には姫宮に何もかも持っていかれてました、なんてことになりかねないから気をつけろ」

彼は若干顔をしかめている。
鈴音さんは彼とも知り合いだったらしい。
その表情は鈴音さんの性格を知っていることを物語っていた。

それでも、私はもう、覚悟を決めたのだ。
今日ここに来て。
迎えに来てくれた鈴音さんを見て。

「…鈴音さんになら、何とられても構いません」

彼は少し目を細めて、私を見て、史里さんを見て言う。

「今の言葉、然るべき状況で言って、驚く姫宮の顔が見たいな」

「本当、誰かさんにも言ってもらいたい言葉ですよね、その殺し文句」

別にそういう意味で言った訳ではないのに、恥ずかしくなり、私はお邪魔しました、ありがとうございました、とお礼を言って部屋を出る。

冷たい空気のなかの、よく知ったイランイランの濃い香りを追いかけるために。
作品名:Future Star 作家名:ちひろ