玄関開けたら2分で殺人
で、今現在――
まさに男は私の上で腰を振っている。
「あぁ〜〜!ヘッドロコスさまぁ〜〜」
私、絶叫。
いきなり何を言ってんのって感じでしょ? でもこれが彼のスタイルなの。
初めの1回目は衝撃が走ったわよ。いきなり「僕、ヘッドロコス!」とか言い出すんだもの。何言ってんの? ってなったわよ。でもそうやって、いぶかしんでると彼は自分の鞄から何かドデカいファイルを取り出してさ。その中身を喜々として見せるわけ。裸で。
ファイルの中には無数のシールが綺麗にファイリングされててさ。
よくよく見てみると、私が小学校の頃に流行ったビックレメンシールだったの。
流行ってから10年以上たった今も、彼はまだこのシールにご執心で、プレイの際には自分をヘッドロコスっていう大天使、相手の女性を敵対するサタヌマリアに見立てないと、イケないんだって。
ばっかみたい。とか思いながらも2〜3回は良かったのよ。それなりに新鮮で、笑えて。
でもさ、やっぱりキツイじゃない。無理よ、毎回サタヌマリアは。そんなテンション高くない日もあるしさ。
それで別れ話になって、彼も承諾したはずなのに。なんでかなぁ。
「ああ〜〜、サタヌマリア! 君はどうして天魔界に生まれたんだ〜〜ぁぁあ!」
泣いてんのよ、彼。完全にイっちゃってるわよ。おっ勃てながら号泣って正気の沙汰とは思えないわよ、ホント。
「ああ〜〜!ロコスさまぁ〜〜〜〜!」
なんかゴロゴロだかホンホンだかっていう漫画雑誌であった設定みたいなのよね。この二人が実は心惹かれあっていて――みたいなの。それを読んで以来、彼はこの設定じゃないとダメらしいのよ。ソロプレイも含めて。
「うっ、わっ、私はもういかねばならぬ!」
「そっ、そんな! わたくしはまだ」
「うっ! 昇ーーーーーー天ーーーーーーーーーッ!!」
そう言うと彼は私の腹に、白濁したものをぶっかけた。
変な性癖、おまけに早漏。救いようが無い。
作品名:玄関開けたら2分で殺人 作家名:有馬音文