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ボクが召し使い

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 アンドレさんはわからないなぁ・・・。
「実はデスソウルの後をつけてました」
「そういうことは早く言ってくださいよっ」
「萌さんが行くところの、大学生の身体に寄生しているようです。一人の男の目の前で姿を消しました」
 いつもアンドレはどこか抜けてるような気がする。
「それはそうと、早めに退治したほうが良いですね。萌様は、どういうわけかよく狙われます」
 言わばが実行。主人の後を追った。
「そこの人、ちょっと良いですか・・・?」
 一人の男の足が止まる。
「何すか?」
「デスソウルだ・・!成敗します」
「ガイさん!?」
「ちっ、レミーアの召し使いか」
 あわてて男はキャンパスの中へと逃げていった。
 当然、ただ逃がすだけではない。これにはちゃんとした計算が組まれてある。
「ここのほうが、戦いやすい」
 キャンパスの中の広場に出た。表の路地では負傷者が出る可能性があるからだ。
「大人しくその身体からでてこい、でないと、この男ごと斬る」
 刃をデスソウルに寄生された人間へと向ける。
「まっ、待って!彼は悪くないでしょ?」
 萌が二人の間に割って入ってきた。
「地獄ではそんなこたぁ、タワゴトでしかねぇんだよ」
 男からデスソウルが抜けていく。
「ボクを前にして、よく出てきたね」
 しかし上には既にボクがいて、魂を斬る。
「成仏ぅ!」
 ボクは自分の魂のカケラを、デスソウルの封印にささげた。
 
「今週に入って二体目。こんなこと続けていたら、そのうち死んでしまうぞ・・・」
 
 永遠なんてものは、死神にも無い。苦痛の叫びに耐えられなくなり、魂の全てを消してまでも死を
 選ぶやつも、地獄では珍しくない。魂のカケラを使い果たした死神は、その場で消え行く運命にある。
 デスソウルを封印するためには、そのカケラが必要とされ、最後のソウルを封印すれば、ボクも生きて
 はいられないだろう。しかし、それがたとえ茨の道であろうと、主人の命令であれば甘んじて引き受け
 る。それが召し使いの役目。
「・・イ・・さ・・・ガイさ・・ん」
 目の前が真っ暗で、まぶたが落ちていることに気づくのは、2秒ほど後。
「萌・・様」
「めぐみで良いよ。ガイ君」
「デスソウルを封印するには、魂を少しづつ削らなければいけない。だから疲れるんです」
 息があがる。少し休息が必要なのかもしれない。
「君、死神だろう、これをやる」
 見知らぬ執事服の男がこちらへとやってくる。アンドレではなさそう。
「そこの女」
「へっ、私?」
「あまり召し使いを強引に扱わないことだ。このままだとこの死神、死ぬぞ」
「違う、ボクはボク自信で主人を助ける。それが召し使いの仕事。あなたも執事なら、わかり・・ます?」
「主も、主自信で自分の身を守れなければ、召し使いの名が汚れるだけだ。俺の主は、お前たちのような
 器の小さい方ではないのでな」
 ボクの身体が空に舞い、男の目先にこぶしを向ける。
「黙れ下級執事。汚すのはその主ではなく、人の心か。邪魔しにきたのなら地獄へ帰れ」
 一瞬の沈黙が静寂をも包んだ。
「これだけは覚えておけ、その女はやつらを引寄せる何かがある。それだけだ」
 男は背を向けながら、自分の名をもらす。
「俺はビスタルク。ルマーン・ビスタルク」
 消え行くビスタルクの姿を目で追いながら、ボクはそのまま萌を大学へ見送った。
「心配じゃないんですか?またやつらに狙われるかもしれない主を放っておいて」
「アンドレさん、しばらく見張ってもらっていい?、ボクしばらく休むよ」
 そうして歩きたどりついた公園で、先ほどビスタルクに渡された薬を取り出す。
 あんなやつの言葉を信用してもいいのか、しばらく飲むのをためらったが、ボクを殺すなら、あの時
 でも出来たと考え、一気に口に入れた。
「うっ・・」
 倒れこむ、そして手を地べたにつき、のど元を掴み苦しくなる。
「なっ・・あいつ・・・何を入れ・・」
 気づけば手に血の痕を確認した。どこだ、どこから流血している。
 どこからも出ていない。何だ。これは幻覚?
 
「やつに幻覚剤を渡した」
「あなた、どうしてそんなバカなマネを」
「アンドレ、お前にはわかってるんだろう?あいつの命がそう長くはないってことを」
「わかっています、だからと言ってそんな」
「あいつに、苦しんで死んでもらいたくないだろう?」
 
 目の前に映る光景全てに赤みがさす。苦しい・・・。
「誰だ・・いや、全てが敵だ」
 そう思えてくるのも、幻覚を見せる薬のせいなのだろうか。
「ガイさん!今すぐその薬を・・・」
 アンドレの姿がかすれ気味に目に映る。しかし、時は待ってくれなかった。
「敵だ・・ボクを消そうとする悪いやつら・・・」
「待て、あなたは今幻覚を見ているんだ。しっかりしてください!」
 そんな言葉すら耳に入らず、ボクは刃でアンドレの方へ振り回す。
「くっ・・ガイさん、すいません」
 それ以降のことは、あまり覚えていない。
「・・・う・・ん・・・アンドレさん?」
「気がつきましたか」
 目を覚ますと、そこは公園のベンチの上だった。
 頭が重い。一体何があったのか、知る由も無い。
「ビスタルクが、あなたに渡したのは、幻覚剤です。手持ちの解毒薬が効いてよかったです」
「何であいつそんな物、ボクに・・・」
「これで一つわかったのは、やつはあなたを消そうとしています。理由はいまひとつ解りかねますが・・・」
 ビスタルクの存在が、さらにボクたちの謎を深めた。
「それで、何故アンドレさんははボクを助けるんです?死神が死神を助けるなんて、聞いたこと無いからむしろビスタルクのほうが正解のはずで・・・」
「同じ、召し使いだからでしょう。召し使いは同じ主の下で働く召し使いとの交流が必要。勿論あなたも、そしてたとえそれが、人間でも。仲間って、結構いいものですよ」
 アンドレは微笑んで、そして、楽しそうに話してくれた。仲間・・・それは死神も人間も関係ない。
 それは皆一つ。
 
 萌の帰宅を待ちながら、ボクはアンドレさんと暇つぶしにトランプでスピードをしていた。
 今のところ、最高記録は4秒。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、今日の夕食は・・・」
「ああ、夕食なら大丈夫。私もう食べてきたから。ゴメンね、なんか作ってもらってて」
 無償にイラだちが顔に見え隠れするボクの顔を見たのか、アンドレがすかさず作ってしまった夕食を
 全て食い尽くした。
「めふゅみひゃんお、ひひょははふひへふへ」
 何を喋っているのかわからない。
「アンドレさん、ボクの分は・・・」
「ふぅ・・めぐみさんも、人が悪いですね」
 お前が一番悪い。
 
萌がボクの主になってから早1ヶ月、あれ以降デスソウルの姿はすっかり見なくなった。
「萌様、今から大学ですか」
「ううん、今日は大学はお休み。だからちょっとその辺ぷらぷらしようかなぁって」
 息抜きに外へ出るのはいいこと。でも外へ出れば、そこはいつやつらが襲ってくるのかわからない
 世界だ。一人では勿論のこと、私と同行してやっと散歩できる。
「ガイ君、その格好で歩くの?」
「どうしてですか」
「いやその、さすがにソレはちょっと・・・無かったら私の服着る?ほら」
作品名:ボクが召し使い 作家名:みらい.N