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僕は君が好きだった

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 と、日本語じゃない言葉を発して、しばらく何も言わなかった。
 もしかして、間違えたか?
「ううん、当たってるよ。由希ちゃんって言うから、びっくりしたよ」
 悪ふざけのつもりだったのだが・・・俺って笑いのセンス無いのか。
「う~ん、時と場合による」
「そうでっか」
 むこう側の廊下を、二人の女子生徒が歩いているのを、俺は遠目で眺めていた。
「智君、髪の毛の形って、その人の印象も変わるっていうよね。智君が好きな髪形って、
 どんなの?」
「由希みたいな髪型かな」
「はううっ」
 まただ、つくづくセンス無いな、俺。
 
          午後3時40分(学校内・放課後)

 今日は部活オフらしく、俺はそのまま家へ直行だった。校門前にはしずくがいて、淳を
 連れて一緒に下校した。
 
          3月9日火曜日午後1時30分(学校・クラス)
 
 学校のチャイムが鳴り、生徒たちが自分の机から離れていく。
 俺の前の席に座っている淳が、先ほど配られた数学のプリントと格闘中だった。
「はぁ、部活もまだ決まってないってのに」
「何だ淳、部活やるのか?」
「まぁ、一応な。やっぱ何かやっておいたほうがいいだろ」
 珍しく淳が積極的に、部活について考えていたらしい。
「じゃあ、ぜひ展望部にでも・・・」
「お前らの間に割って入る気はねぇ、遠慮しておくぜ」
「はぁ?」
 淳はそのまま立ち上がって、俺を連れてパンを買い、二人で外のベンチに座った。
「あ・の・なぁ、俺と由希はそんな関係じゃない。何度言えばいいんだ」
「わあってるって。今日もその展望部はあるのか?」
 
         午後4時30分(学校内・放課後)
 
 部活動の時間になり、グラウンドから硬派な呼び声が聞こえてくる。
 体育館倉庫に行くと、天体望遠鏡が外に出されていた。
「由希、あの望遠鏡、どうしたの?」
「今日の課題は天体観測、だから、アレを山の滑走路に持ってくのよ」
 滑走路とは、おそらく三日前山奥の地面に描いた、あの滑走路のことだろう。
「わかった、じゃあ早速持っていくか」
「うん!」
 せっせと俺と由希は、望遠鏡を山の奥へと運んでいき、気づくと外はすっかり暗く
 なっていた。

「ちょうど良い時間になったね。お疲れさーん」
「つ・・疲れた・・・」
 すべての用具を持ち運ぶのに、山と学校を2往復もしていた。
 空を見上げれば、無数の星が、散りばめたようにあちこちで煌いていた。
「わぁ、綺麗・・。智君見て、オリオン座だよ」
 そんなこんなで、なんだか心が落ち着いてきた。
「流れ星、見れないかな」
「待ってたら来るんじゃないか?ほら、望遠鏡もあるし、のぞいてみるか」
 俺は望遠鏡をスタンドにセットして、てきとうに宇宙を見回していた。
「智君、展望部、楽しい?」
「ああ、最初は活動内容があやふやで、あまり乗る気がしなかったけど、こうして活動
 していく内に、だんだん楽しくなって・・・展望部があって良かったと今は思う」
 振り返ると、座った由希が俺に寄りかかって寝てしまっていた。
「何だ、寝てたのか」
 望遠鏡に手を置き、俺は由希を起こさないように流れ星を探していた。























          第二話 亀裂

         3月10日水曜日午前7時30分(通学路)

「ぶえっくし!」
「おい智樹、さっきからずっとクシャミばっかだな、風邪でもひいたか?」
 これはしずくと淳と一緒に登校していたとき。
「いや、多分昨日遅くまで外の風にあたってたからかも」
 そう、昨晩由希が山で寝てしまって、起こすにも起こせない状態だったため、今のこの
 現状に至るのだ。
「ん?あれは・・・」
 前方に今にも階段を登ろうとしている女子生徒の姿。
「生徒会長さんじゃないか」
 淳はどれだけ女子生徒のことを知っているのか、時々引く時がある。
「彼女、すげぇ無口ならしいぜ。未だにこの高校に入って口を開いたことが無いってよ。
 噂ではあいつは感情も無いって話だぜ」
「淳、そういう陰口は良くないと思うよ」
「ちょっ、噂だって噂、俺が言ったわけじゃねぇ」
 まぁ確かに、目もどこを向いているのかいまいち理解しかねる点はあるが、ルックスは
 悪くない。
「どうせなら声かけてみろよ。反応が楽しみだね」
 こいつは何が楽しくてそんな悪徳業者みたいな顔をするのだろう。
「お、おはよう、っていうか、はじめましてかな。俺、1年3組の市ノ瀬智樹。よろしく」
 思い切って単刀直入に自己紹介の場をおっぴろげた。
「よろしく」
 返答はそれだけだった。確かに、変な噂が流れてもおかしくない・・か。
 いやでも、返事してくれたじゃないか、感情が無いなんてバカバカしい。
「へへ、な?だから言ったろ」
 
           午後1時30分(学校・庭)
 
「淳、そういえば、今朝のあの生徒会長の名前、何ていうの?」
 パンを片手に、俺と淳はいつものベンチに座って、のんびりしていた。
「えとな、確か・・・関島佐奈(せきしまさな)だったっけ。俺もあまりよく知らねぇ」
 パンを食べ終わり、ビニール袋を捨てようと、俺がベンチから立ち上がると、後ろから
 誰かに肩をたたかれた。
「君かな?智樹君って」
「あ、うん、そうだけど」
 見ると、そこには見たことの無い男子生徒が一人立っていた。
「生徒会で、副会長をしてる東郷健(とうごうけん)というんだが、ちょっといいかな」
 すると東郷は俺を連れてどこか人気の無いところに来た。
「智樹君、君の所属する展望部に、廃止の可能性があるとの声が生徒会で浮上してきた」
「なっ・・・」
 突然の悪報を聞いて唖然とする。
「でもまだ検討中だから、確実に廃止するとは限らない。僕も君たちが展望部を
 楽しんでいるのは知っているし、活動記録もちゃんと提出されているから、廃止に
 したくない。だからそのように頑張ってみるけど、もし本当に廃止になった時は・・
 許してくれ。そしてこのことはくれぐれも加藤には言わないでおいてくれ」
 そう言うと、東郷は会議室に行くと告げて、行ってしまった。
「何で・・・展望部が廃止?」
「おう智樹、さっきはどうしたんだ?」
 淳が駆けつけた。しかし放心状態だったのか、淳の存在の確認さえ出来なかった。
 
           午後4時(学校内・放課後) 
 
「やあやあ智君!今日も張り切って行こうね!」
 いつもと何ら変わらない部室。そして由希。彼女はこの展望部が廃止になる可能性が
 あるなんて知りもしない。
「どしたの?元気無いね」
 駄目だ、そんな暗いことばかり考えていても仕方ない。
「ん?そんなことないよ、今日は何をするのかなぁって」
 胸が痛かった。
 
           午後6時(学校・校門前)
 
 それから俺は部活を終え、校門前に行く。
「智兄、帰ろう」
 今日はしずくだけならしい。久しぶりに二人だけで帰る帰り道。
「智兄、元気無いね。どうしたの?」

「俺が行ってる展望部が、部活動リストから消されるかもだってさ」
 自分でこう言うと、悔しさが更にこみ上げてくる。
作品名:僕は君が好きだった 作家名:みらい.N