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僕は君が好きだった

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「俺もだバカ。部活あるってちゃんとしずくに言っとけよな」
 淳も一緒に待っていてくれてたようだ。なんだか悪いことした気になってしまう。
「それで?どうだったんだ?その・・」
「展望部」
「そう、それ」
「いい加減覚えろ。今朝も同じこと言った気がするぞ」
 その後も、俺の脳から離れないだだっ広い大宇宙の壮大な話を二人に話し続けた。
 途中から淳の返答が投げやりになった。
「智樹、まぁ何だ、楽しそうだな」
 その顔で言うな。なんだか馬鹿にされてる気分になる。
 家について、由希から手渡された本をバッグから取り出す。
「『織姫と彦星』か、これはまた、洒落たもの選んだな」
 一ページ目を開いて、黙々と読み続けているうちに、時計の短い針は真上を指していた。
 しおりを挟んで、電気を消し、就寝する。
  



          3月6日土曜日午前9時(自宅・寝室)

 休みの日になると、どうしても長い間寝てしまう。昨日、寝る時間が遅かったせいでも
 あるのだが。
 しばらくすると、机の上の携帯電話が動き出す。
「智樹、起きてたか?」
 淳だ。
「ああ、今起きたよ。どうした?」
「すぐに学校に来てくれ!やべーことが起きた」
 淳の言う「やべーこと」とは、大抵はそこまで「やべーこと」ではないのだが、今回
 ばかりは、そんな生半可なことではなさそうだ。
「わかった、すぐ行く」
 電話を切り、すばやく制服に着替え、坂を下り、階段を上り、西校にたどり着く。
 校門前では、生徒達が教員の壁で抑えられていた。校舎を見ると、体育館の窓ガラス
 がほとんど割られていた。
「智樹、今来たか。ありぁひでぇな、ある意味事件物だぜ」
 大きく割られたガラスを見て、犯人は相当な怒りを抱いていたのだろう。
 でも一体誰が?
「ここにいる生徒たちに聞く。昨日、夕方遅くまで校舎にいた生徒の名前をあげろ」
 教員が大きな声で全生徒に呼びかけた。
「おい智樹、昨日俺たちが帰るまでは、あんな風にはなってなかったよな」
「ああ、あんなに割れていたなら、すぐ気づくだろうし」
 しかし由希はどうだろう、昨日俺が帰ってもまだ図書室で整理をしていた。
 いや、だめだ。何を疑ってるんだ。あいつがそんなことするはずが・・・。
「先生、僕知ってます。天壌(てんじょう)です。あいつがやったんです」
 一人の男子生徒が言う。
「天壌?誰だ?」
「俺もわかんねぇ」
「だぁれ?天壌って」
 皆がざわめく。しかし淳は知っていたようで。
「天壌?あいつはそんな幼稚なことしねぇよ」
 淳が男子生徒にはむかう。
「黙れ、僕は文芸部の部長だぞ」
「そんなの知るか、いい加減なハッタリ言いやがって」
「おいおいどうしたんだよ淳。天壌って誰だよ?」
 淳は俺の顔を見て、きょとんとする。
「昨日お前天壌愛と会ってるぞ。あの無口無表情の女子生徒。昼休みに喧嘩してたろ、この文芸部の部長さんとよ」
 もう一度部長を見る。
 あの人が、天壌愛さん?
「まぁ、とりあえず教員のほうから、天壌の家に電話する。お前達は帰ってよし」
 先生の一言で、全員は解散する。
「淳、どうしたんだよ、あんなに取り乱すの、お前らしくないぞ」
「わ、わりぃ。けど、何だかイラついて・・・」
 しばらく歩いていると、前方から女子生徒が向かってきた。
「いいっ!?ゆっ、由希?」
「やほーい!智君おはよう!」
 再び抱きつかれる。待て、ここにいる一男子生徒君が勘違いするからやめてくれ。
「とっ、智樹・・・お前、いつの間に・・!」
「違う!そういうのじゃない!」
 それから、俺は歩きながら由希のことを淳に話した。
「なるほどな、驚いて損したぜ」
 淳にとって得も無いと思うが。
「由希さんは、何してたんすか?」
「智君、やっぱり敬語やめ。なんだか私にはそれは性に合わないみたい。ははっ、だから
 由希でいいよ」
 あ、そうなんだ。まぁ確かに、同学年に敬語は少々おかしいと思ってはいた。
「いやぁ、体育館の窓ガラスがほとんど割られてるって、天壌から電話がきてさ。
 学校行ってみてビックリだよ」
「おい、今天壌つったか?」
 それを聞いて、淳はUターンして学校へ大急ぎで戻って行った。
「どしたのかな?」
 さぁ、大方、あの文芸部の部長さんがホラ吹いたことを確信して、教員に真実を伝えに
 でも行ったんじゃないか?
「ねぇ、智君今日ヒマ?」
「まぁ、一応ヒマかな」
「じゃあ、今日は野外活動しようよ!勿論、展望部として」
 そして俺たち二人は、そのまま学校付近の山へ向かった。
「で、どうして山なの?」
「どうしてって、UFOの着陸用滑走路を作るためよ」
 由希の頭の中はどうなっているのだろう、もしかして、到底理解できない小難しい哲学
 が詰まっていたりして。
 山を歩いて、開けた場所に出た。すると由希は、バッグから長い鉄の棒を取り出した。
「もしかして、これで滑走路を描け、とか?」
「飲み込みが早い!」
 やっぱり。しぶしぶながら、由希の指示を受けつつ長い線を描き、その上に『UFO様、
 祝初地球着陸』と文字を書いた。
「ふぅ、これでいいだろう」
「うん!上出来!これでUFOが来ても、道を見失わないよ」
 しかし何でだろう、これを描いている間、自然と楽しくなってきていた。由希といると、
 楽しい気分になれたんだ。
 
            午前11時30分(商店街)
 
 気づけばもう昼。どこかハンバーガーでも食べようかと、俺は由希に問いかけたところ
「ごめん、もうそろそろ私帰んなきゃ、今日は楽しかったよーまた明後日」
 と、あっさりと断られた。少し悔しかった。
 



          3月8日月曜日午後1時30分(学校・昼休み)

「智樹、お前最近楽しそうだな」
「え?何で」
「何か、その展望部に入部して、いいことでもあったか?あの由希とかいう子といい関係
 でも?」
 淳はからかって、笑いながらいつも通りに食堂へ向かう。
「それより淳、お前一昨日あれからどうしたんだ?急にどっか行っちまったからさ」
 あの体育館窓ガラス破損事件が起きた日のことだ。
「あああれか、あれから俺は教員に真実を言ったんだ。天壌じゃあ無いってな。そしたら
 教員、天壌の対処分を取りやめてくれたよ。俺はそれからホラ吹きやがった文芸部の
 お偉い部長さんに一発食らわしたよ」
「ちょっ、お前よくそれで今も平然に学校来れてるな」
 俺は淳の最後の一言に驚きを隠せなかった。
「俺が一つ脅しを入れといたからな。易々と教員には申告できねぇだろ」
 俺は凄い正義感を持ったやつと友達になったもんだ。
「でも、どうしてそこまでして天壌のことに関わるんだ?」
 すると淳は俺から目をそらして、小声で
「べっ、別にいいだろ、どうでも」
 ずばり、惚れていると見たね。不器用だからな、淳は。すぐに顔に出る。
 それから俺は、パンを2つ買って、外のベンチでのんびり食べていた。
「だーれだ?」
 俺の目が誰かの手で目隠しされる。こんなことするやつがまだいたのかと、そこに関心
 を抱く。そしてこの声は・・・。
「由希ちゃんかね」
「はうっ」
作品名:僕は君が好きだった 作家名:みらい.N