若返りの泉 TWENTY
16 カ ナ シ バ リ
胸を押さえつけている者がいる。
それは小さい。が、ずっしりとした重みがある。
目を開けて見ると、赤ちゃん? しかし息子ではない。
手足を動かそうとするのだが、動かせない。
だれか、と声を出そうとするのだが、声が出せない。
観念してじっとしていると、
そのまま眠りに落ちて入ったようである。
出産して数カ月は、不規則な生活を強いられた。夜中に泣き声で何度も起された。お乳を与え、おしめを変えて。眠るためのまとまった時間が取れず、ついに『カナシバリ』というものにとらわれてしまったのだ。後にも先にもこれ1回きりのことではあったが。
金縛り
からだは完全に休んでいても、脳だけはほとんど起きている状態をいう。
筋肉の力は最も低下しているが、血圧・心拍数・呼吸は乱れているので息苦しく、からだを押さえつけられているという幻覚を見る、
のだそうだ。
家事、育児には手抜きをしていたつもりだったが、それでも疲れがたまっていたのだなぁ。
作品名:若返りの泉 TWENTY 作家名:健忘真実