若返りの泉 TWENTY
14 イ ナ ビ カ リ
初めて一人旅に出たのは、中学1年生の時だった。母の実家へ、である。
前年の夏休みは姉と二人で出かけたのだが、姉が高校生になると部活で忙しく、行かなくなった。
それまではずっと、金魚のフンのようにくっついて、姉の友達の家へも、映画や買い物、親類の家へ行くのも一緒だった。
やがて出しきられたフンは、プカプカと漂って、この一人旅を決行したのである。
見送りを受けて大阪駅から列車に乗り、福知山駅まで。そこから教えられたとおりのバスに乗って田舎の家まで行った。
列車に乗っている時、途中で停車した。
周囲には建物はなく、田んぼが広がっているばかりのところである。
遠くに稲光が見えた。どこかで落雷があって、列車は止まったらしい。
どうにもするすべはないので、ただ外を眺めていた。
ギザギザの矢が幾筋にも分かれて、天から地へ放たれるのを眺めていた。
美しかった。
作品名:若返りの泉 TWENTY 作家名:健忘真実