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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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「私は恨まれて当然・・というわけですか」
匠の話をずっと黙ってきいていた誠司が言った。

「鷹島さんのせいではありません」
きっぱりと匠が言う。
その後も搾り出すように言葉を続けた。
「私が、悪いんだと思います。実の弟なのにどうすることもできなかった・・・」
だが、今頃悔やんでももはや償えるわけもない。
樹の眠っている顔ですら直視することができずに、顔は背けられたまま。

「あの・・・違うんじゃないですか」
思わず空流が口を挟んだ。
「たぶん、誰が悪いとか、そう言う問題じゃないと思います」
必死に空流が言うけれども匠の顔は変わらなかった。
「樹は、あなたに何をしましたか?」
そういわれて少し前のことを思い出す。
身体が恐怖に固まった数分間。
そして、これからどうなるかもわからぬままに過ごした時間。

でも・・・
「守って、くれました」
そう言うと、匠だけでなく誠司も驚く顔。
「樹が・・・?」
顔をしかめて、そう聞いてくる。
「はい、樹さんが」
湯飲みが飛んできたとき。
叩かれそうになったとき。
そして、樹が預かると言い出さなければまたあの倉庫の日々が帰ってきていたに違いない。

「僕のためにってわけじゃ、ないかもしれませんけど・・・」
思い出す。
誠司のためでなければ気にかけるわけなんてない、と。
そういわれたことを。

「けれど私が行ったとき、彼が空流にしていたことを許すわけにはいきません」
きっぱりとそう言うのは誠司。
「樹が何をしましたか?」
匠の問いには、しばらくどちらも答えなかった。
答えを待つ匠に耐えかねて、誠司が空流の方をみる。
誠司の視線に答えて空流が頷いた。
空流がされていたことを誠司が告げると匠は目を閉じた。
「なぜ、そんなことを・・・?」
匠の言葉は空流に向かって投げられていた。

「多分、樹さんが誠司さんのことを好きだからだと思います。・・・それに多分、匠さんのことも」
よくわからない空流の答えに二人ともが眉を寄せる。
「えっと、つまり・・」
説明をしようとしたところでそれはさえぎられた。

「勝手なこと言わないで」
ベッドから声がした。
見ると樹が目を開けている。
じきに樹の目が覚めることはわかっていたはずなのに、なんとなく全員がそのことに安堵した。
「推測で適当なこと言わないでよ」
ベッドから発される物言いはあいかわらずきつい。

「その子のこと傷物にしてやれば鷹島さんでもちょっとは傷つくかと思ってやってみただけ。最初優しくしたのもそのための下準備」
早口でそうまくし立てて再び目を閉じた。
もう話すことはない、というように。

「私への恨みのために、空流を利用したわけですか?」
その声には一切の感情がこめられていない。
「まったくその通りです」
樹も平然と答えた。
二人の間に漂う空気に耐えかねた匠が口を開く。
「鷹島さんはうちを助けた。感謝することはあっても恨むことなんか何もない」
「いいえ」
即座に否定の言葉を口にしたのは誠司。
「私は、樹君との約束を破りました。また必ず会いに来ると言ったのに、結局今がそれ以来の再会です」
「別にそんなこと今更気にしていません」
「だったら、なぜ・・・」
そう問うたのは匠。
樹はしばらくその質問には答えなかった。