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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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「ただいま」
樹のところから敦也が家に帰ってくると、玄関の電話で兄の俊弥が電話をしてる。
その兄がこっちを見て、受話器の向こうの相手へ何か話した。

いつもなら素通りするところだけど呼び止められる。
「敦也、電話だよ。後で事情はゆっくりきかせてもらうけど」
受話器を差し出してくる。
「誰?」
「出ればわかるよ」
受話器を受け取って耳に当てるけれども、俊弥はすぐそばに壁によりかかったまま動かない。
「もしもし?電話かわりました」
眉をしかめて俊弥のほうを見ながら電話の向こうへ言う。
『敦也さんですか?空流です』
「え・・・?」
いきなりの事態に信じられないけれど、電話の向こうの声は確かに空流のもの。
兄を見ると険しい表情。
『あの、すぐに来て欲しいんです。樹さんが大変で・・・』
自分も混乱している状態なのに電話の向こうからもあわてた声。
「ちょっと、とりあえず落ち着いて。どうしたの?」
落ち着かせるのと同時に自分のことも冷静にして電話に応じる。
樹ではなく空流が自宅の電話にかけてきてしまうということは何か事情があったのだ。
『指がすごく腫れてて色も悪くて、口の端っこにも血がついてて・・・すごく辛そうなんです。救急車呼ぼうとしたんですけど、止められて・・・敦也さんならいいって・・・』
混乱してるのか話が少しめちゃくちゃだが言いたいことはわかる。
「その指ってどの指?」
『右手の小指です』
「わかった、でもどっちにしろすぐに病院にいかないと。とりあえず冷やして絶対動かさせないようにしといて。できるね?」
『はい、がんばります。』
添え木になるようなものを探して固定までを空流に頼むのはきっと難しい。。
「今からタクシー拾ってすぐ行くけど多分20分はかかるから、その間に頼んだよ?」
『わかりました』
電話の向こうでの落ち着いた返事をきいてとりあえず安心。
受話器を置いて、ポケットに財布と携帯があるのを確認してまた靴を履いた。
「敦也、急ぐなら俺の車出す?どうせ病院に運ばなきゃいけない人いるんでしょ?」
電話の内容を聞いてた兄がそう言ってくる。
でも、樹には悪いけど骨折くらいならそんなに急がなくてもいい。
兄の力を頼らなきゃいけないほどには多分、事態は切迫してない。
「大丈夫、タクシー拾うから」
敦也が走って家を出て行った。

「・・・空流くんが絡んでるなら、結局俺も後を追うことになるんだけどね」

誰もいなくなった玄関で俊弥がそうつぶやいたことなどは知る由もなく、敦也はタクシーが拾えそうな国道までの道を走っていった。

俊弥のほうはそのとき携帯電話を耳に当てながら家の車庫を空ける。
電話の相手は決まっている。
その相手がもうそろそろ発狂してしまうんじゃないかと心配になっていたころ。

『俊弥?どうした?』
「空琉くんから今うちに電話があった」
そういうと相手は驚愕のあまり声も出ない様子。
「空琉くんのところに向かってるんだけど誠司は今何してるの?」
『不動産関係者との会食』
よりによって、抜けるのが難しい上に後回しにも出来ないだろう席。
「終わったら連絡して」
多分納得しないだろうけど、それが一番いい。
『いや、10分以内に切り上げてみせる。そしたらまたかけ直す』
自信たっぷりにそういうと電話が切れた。
きっと10分もかからないうちにコールバックがくるに違いない。

どこに行けばいいのかと電話が来る頃には、こっちも向かう方向は決まってるだろう。

家の近くの国道に出ると、ちょうど敦也がタクシーを拾ったところ。
迷うことなく、それを追った。