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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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隣の部屋から物音がしなくなって、しばらく。
かかってた音楽は30分くらい前に消えた。
でも人の気配を感じなくなってからはもう1時間くらいはたつはず。

「・・・どうしたんだろ」
もしかして、もう寝てしまったとか?
部屋をつなぐ扉を開けてみる。
鍵はかかっておらずに意外とあっさり扉は開いた。

「樹さん・・・?」
電気が消えていて誰かいるのかも誰もいないのかもわからない。
暗い中を手探りで歩いて、入り口のそばにある電気のスイッチにたどり着く。
カチツと音をたてて部屋を明るくするとソファに横たわる人の姿。
「樹、さん・・?」
呼びかけてみるけれども返事はない。
近づいてみると苦しそうに眉根を寄せて唸ってる。
口の端には、血のついたような跡。
「樹さん?大丈夫ですか?」
「・・・いた・・」
つぶやくようにそれだけ言う。
見ると右手の小指がありえないくらいに腫れている。
どうみても、骨が折れてる。
きっとこのほかにも、色んなところに打ち身があるに違いない。

「救急車呼びます」
机の上にあった携帯電話をとってきた。
119の番号を押そうとすると腕を掴まれた。
「やめて。大事には、したくない」
息も絶え絶えにそんなことを言われても納得できない。
「そんなこと言ってる場合じゃ・・・」
「大丈夫だから」
「でも大丈夫そうには見えません、誰か呼びます」
「敦也にして・・・誰にも知られたくない」
そういわれると何もいえなかった。
樹さんは目を閉じて唸りながら必死に痛みに耐えている。
使い方のよくわからない携帯電話のボタンを適当に押すと、着信履歴に仲原敦也の文字がある。
受話器を上げているほうのマークを押せば電話がかかることくらいは知ってるから押した。
コール音が何回かして、ガチャと受話器が上がる音がする。
『はい、仲原ですが?』
敦也さんが電話に出た。
「あの、敦也さんですか?樹さんが大変で・・・すぐに来てもらえませんか?」

このとき、冷静にものを考えるなんてことができてなかった。
早く樹さんを助けなきゃってそればっかりで。
どうして受話器を上げる音がするのかとかなんて全然考えなかったし、よく聞けば敦也さんと似ていても違う声だってことくらいわかったはずなのに気がつかなかった。

『敦也ならまだ帰ってきてませんが・・・どちら様ですか?』

「え・・・あの、すみません・・」
電話に出たのは、敦也さんじゃない。
それに、さっき受話器を上げる音がした。
もしかしてこれって、自宅の電話?

だったら、この敦也さんにとてもよく似た声の人は・・・

「もしかして俊弥さん・・・ですか?」

そう問いかけると一瞬の沈黙の後に怒涛の勢いで言葉が返ってきた。

『まさかと思ったけど、空琉くん?どうしたの?今どこにいるの?誠司がどれだけ心配してるか・・・。すぐに誠司のこと連れて迎えに行くから、どこにいるのか言って』
本当なら、話さなきゃいけないんだけど、今はそんなことしてる場合じゃない。一刻を争う事態。
「ごめんなさい、今、緊急なんです。どうしても急いでて・・・。すみませんっ。また連絡します」
そういって電話を耳から話そうとした瞬間に、電話の向こうで玄関の開く音がした。
それと同時に「ただいま」という声も。
『ちょっと待って。敦也が帰ってきたよ。急いでるなら事情は後でゆっくり話してもらうから敦也に代わる?』
「お願いします」

電話の向こうでの話し声が聞こえる。
『敦也、電話だよ。後で事情はゆっくり聞かせてもらうから』
さっき僕に言ったのと同じようなことを言って俊弥さんが受話器を渡した。