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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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35

「準備できた?」
その声とともにドアが開いたのはすぐ。

「いくよ」
黙って廊下を歩くこの人の後をついていく。
念のために、通った道を良く覚えておこうと周りを見渡しながら歩いた。

ひとつの家の中にしてはたくさんの距離を歩いて、足が止まった。
見覚えのあるふすまの部屋の前。
一番最初にここに連れてこられたときに見た部屋だ。

前はこの部屋の中で、あの人たちが僕をどうするかについて言い合いをしてた。

またこの部屋の中にあの人たちがいるのかと思うと、少しお腹に重いものがたまったような感覚がする。
ふすまを開けるために樹さんの手がもちあがった。

『・・・れば、・・だろう・・!!』
『・・て、・・ない・・じゃない・・・!!』

中から言い争う声が聞こえる。
内容まではわからないけれど男性と女性の声。
間違いなく、あの人たちだ、血縁上は僕の伯父と伯母に当たる人たち。

「中が落ち着くまで少し待とうか」

樹さんがそう言って、ふすまを見つめながら二人で並んでしばらく待った。
その間に聞こえたのは、絶えず言い争う声と何回か人を殴る音。

その音を聞くたびに隣にいるこの人の眼が細められて、手は拳を握り締めているのを見た。
中で何が起こっていたのか、僕は正確なことは何もわからない。

でも、この家が尋常じゃないってことだけは、なんとなく伝わってきた。

「収まったみたい、行こう」

音が止んでしばらくしてから樹さんはそう言って、ふすまを開けた。
「失礼します」
僕が今までで聞いたどんな声よりも低く、冷たい声でそういいながら一緒に部屋の中へと入る。

部屋の中にいたのは、叔母一人だけだった。

「樹、ずいぶんと遅かったのね。呼んだらさっさと来なさい」
「すみません、朝早い上に突然だったもので準備に手間取りました」

一瞬、自分の耳を疑った。
だって・・なに、この会話。本当に他人みたい。

「二人とも、そこに座りなさい」
テーブルを挟んで樹さんと叔母さんが座る。僕は樹さんの隣にひざをついて座った。

「大体のいきさつは匠から聞いたわ、どういうつもりなの」
「お聞きになったとおりだと思いますけど」
「あなたがどういうつもりでその子の面倒を見るって言い出したのかを聞いてるの」
イライラしてるのが伝わってきて、こっちまで落ち着かない。
でも樹さんはそんな様子なんて全く気にしないでしれっと聞き返した。
「じゃあもしこの子をあなたたちに返したら、どうなさるつもりなんですか?」
「質問を質問で返すんじゃないの!全くもう。これだから樹は・・・どうして匠みたいに育たなかったのかしら」

え・・・?ちょっと、待って・・・。

「生意気で親に反抗してばっかりでちっとも言う通りにしないうえに勝手に医大なんかに行くし、親のありがたみをちっともわかってないんだから」

そんなの・・・いくらなんでも子どもの前で言うことじゃない。

「僕がこの子を預かると言ったのは、あなたたちにこの子を返したくないからです。あなたたちみたいな人に任せていたら本当に鷹島さんに訴えられても文句は言えません」
「なんですって!?」
「事実です。あなたの質問にはお答えしました。僕の質問に答えてください。この子をあなたたちに返したらどうなさるつもりなんですか?」

この質問に対する答えは用意してなかったみたいで、答えに詰まってた。

「用件がそれだけなら失礼します」
樹さんが立ち上がった。