君ト描ク青空ナ未来 --完結--
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「どうしたの?大丈夫?」
心配の言葉にも返事を返せない。
「そんなに怖い?」
今はもうあの人たちへの恐怖を感じているわけじゃない。
「俺のこともそんなに怖いのかな?」
その問いかけにはかろうじて首を振った。
「じゃあどうしたのか話してくれる?」
そう言われた後、しばらく時間をかけて声を絞り出した。
「ごめんなさい・・・」
本人を見もしないでその人の周りだけで評価するなんて一番傷つけることだったのに。
そして、それがわかっていたのに、やってしまったから。
途切れ途切れにその内容を搾り出すと、樹さんが言った。
「そこまで考えてくれてるなんて思ってなかったからビックリした」
肩に手を回されてソファへ座るように促される。
すぐとなりに樹さんも座った。
肩にまわされた手はそのまま。
「実を言うと、俺も昨日まではなんでこんな面倒なことをって思ってたんだ」
今度はこの人が昨日からのことをぽつぽつと語りだす。
「君の存在が世間にばれて困るのは父さんと母さんなんだからやるなら二人でやればいい、なんで俺たちが親の尻拭いまでしなきゃいけないんだなんて思ってた」
さっき言ってた『一ヶ月前にここに来てたなんて知らなかった』という言葉が本当ならば、きっとこの言葉は真実。
「こんなところに閉じ込められて、こんなことを言われてもは知ったことではないと思うけど・・・」
そう前置きをして言った。
「君でよかったって思う」
意味を図りあぐねていると、言葉が付け足される。
「たぶん他の人間だったら父さんと母さんに引き渡して終わりだった」
もし、そうなっていたらまたあの地獄のような生活が繰り返される。
「俺は君を知ってしまったから、苦しんでるのはもう見たくない。だから頼むから父さんと母さんにばれないようにここにいて欲しい」
抱かれた肩を引き寄せられる。
「・・・できません」
「どうして?」
「だって・・・」
・・・僕がいたい場所はここじゃない。
一緒にいて欲しい人が、ここにはいない。
そういいかけた言葉はさえぎられた。
「どこにいようと同じことが繰り返されるだけだよ。後見人がうちの親である限り」
そのたびに迷惑をかけ続ける?
言われなかったけど、そんな言葉まで聞こえた気がした。
「君が18歳になるまででいい。その後はうちに縛られることもなく好きに生きていいんだから」
それはつまり、あと2年。
その期間は、あまりにも長すぎる・・・。
「今すぐに納得しろなんて言わない。少しづつ俺の気持ちをわかってくれればいい」
肩にあった手が頭の上へと移動した。
さっき肩を抱かれたときよりも、その手の温かみがほんの少しだけ増しているような・・・。
気のせいかもしれないけど、そんな気がした。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-