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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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32

目が覚めると、薄暗い部屋にいた。
ここはどこだろうととまだ半分寝ている頭が考える。
消去法を続けていって、あまり考えたくない現実にいきあたった。
「夢じゃなかったんだ・・・」
わかってはいたけれどそう呟かずにいられない。
閉められていたカーテンを開けにいく。
東向きではないのか、カーテンを開けてもそう明るくなることは無かった。

部屋にある三つの扉を順番に開けてみる。
1つはユニットバス。
あとの二つのうち昨日使われていなかったほうは鍵がかかってた。
たぶんこれが廊下へとつながる扉。
もう1つのほうはあまり開けたくは無かったけど、音がしないように出来るだけ静かに開けてみた。
そこにはもう一部屋私室がある。
昨日はとても周りを見渡すような状況じゃなかったから何も覚えてないけれど、よく見てみると結構広い。その上ロフトまである。
ロフトの真下に机とオーディオ機器。
カーペットの上にはソファと小さなテーブル、すみのほうに本棚や棚が並んでる。
よく見えないけれど、ベッドはロフトの上にある気がする。

部屋の真ん中を通り抜けて、ドアへ。
ノブを押してみるとあっさりカチャと開く音がした。

自分が通れるぎりぎりの範囲でドアを開けて、外へ出ようとしたときに声が聞こえた。

「匠は結局うまくやったの?全く連絡がないじゃない!」
「連絡がないってことは上手くやったってことだろう、匠なら心配は要らん」

その声が聞こえた瞬間に、外に出ようとしていた体をあわてて部屋の中へ引っ込めてドアを閉めた。
あの声を聴いた瞬間に、自分でも心臓の鼓動が聞こえるくらいになる。
長い間あの人に付けられ続けた傷やあざの跡が疼きだす。

人に対してこんなにハッキリとした恐怖を感じるなんて、初めてだ・・・。
やられているときはこんな風に感じたりはしなかったのに。

あの人たちが、僕の存在に気づかないようにドアを内側から押さえつける。
この部屋の中にまで声は聞こえないけれど、ここに入ってこないことを願いながら、ドアを力いっぱい押さえつけていた。

「なにしてるの?」
後ろを振り返ると、寝起き姿のこの部屋の主。
「外になにかあった?」
さっきまで内側から必死に押さえつけてたドアをその人は軽く開ける。
さっきよりは遠くなっていたけれどもわずかにまだあの人たちの声が聞こえてきた。
また体が無意識に恐怖を感じ取って、震えが来た。
「父さんと母さんか。まだあの人たちが怖い?」
その問いかけには素直に頷く。
「俺はあの人たちみたいなことはしないよ」
僕の肩に手を置いて、その人はいった。
「本当に君には可愛そうなことをしたと思ってる。でも俺は1ヶ月前に君がここに来てたことなんて知らなかったんだ」
まっすぐに目を見られて、そういわれた。

それでも、この人だってあの人たちの家族だから。
そう思ってまっすぐに見られた目をそらしてしまった。
肩に置かれた手に力がこめられる。

「やっぱり・・・親が親ならって思われるよな」

その言葉に愕然とした。

『親がああなもんだから子どもがかわいそうよね・・・』
『おとうさんがいないと こどもはちゃんと せいちょう できないんだってよ』

成長に親なんて関係ないのに、回りはそうは見てくれない。
そのことに自分自身が何年も苦しんできたはずなのに・・・。
同じことをしてしまった。

申し訳なくて、自分が許せなくて、唇をかみ締めて下を向くことしか出来なかった。