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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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24

「この部屋を君にあげるよ」

見たことのあるりっぱな門構えの家に車が入っていくのをぼんやりと見て、広い家の中を車が走ってた。
今度連れて行かれたのは、見覚えのないところ。
着いたのは9畳くらいの部屋。床にカーペットがしかれてて、ベッドに机に椅子。
とりあえず一通りのものはそろっているけれど生活観を何も感じない。ホテルの部屋みたい。

「ここって、樹の客間じゃん」
そういったのは敦也さん。
「そう、廊下に出る扉には常に鍵がかかってる、外からも中からも鍵を使わないと出入りできない。外に出るには間続きになってる俺の部屋を通るしかない。でも部屋境の扉にも鍵がかかるようになってる、どういうことかわかる?」
返事はしなかった。この人が言いたいこともわかる、でも別にそれに関してなんの感情もわかなかったから。
「食事は保障するし、簡単なユニットバスは部屋の奥にある、生活に不自由することはなにもない、1ヶ月くらい前までの君に比べればね」
1ヶ月・・・そっか、まだ一ヶ月しかたってない。
誠司さんと一緒に居たのはそのうちの2週間あまり。
前にここを出たときから、何ヶ月もたったみたい。

「それで、樹は何がしたいの?」
敦也さんが聞いた。
「簡単に言うと、鷹島の若ごっこかな」
バカにするような言い方に思わず眉をひそめる。
「怒らないでよ、君はただここで鷹島の若と生活していたように振舞えばいい、それだけでちゃんとした生活が保障されるんだよ?」
別に生活を保障して欲しいわけじゃない。
「だから、君がどうやって鷹島の若と生活してたのか教えてよ」
こんな誠司さんをバカにするような真似、ぜったいにしたくない。

「なんで何も言わないの?」
僕が何か言ったところで今の状況が変わるわけでもなんでもない。
だから、何も言わない。

「俺のこと嫌いなのかな?」
敦也さんにむかってそう問いかける。
「そりゃあ決して好きではないだろうね」

「じゃあ、敦也のことは好き?」
今度は僕に向かって聞いてきた。
それでも、答えない。
敦也さんは悪い人じゃない気はする。
少なくとも、この樹って人よりは。

「敦也のことは嫌いじゃないのかな。敦也、来週の昼飯で手を打たないか?」
「学内のカフェか?」
「カフェじゃなくても、学内ならどこでも」
「わかった、引き受ける」
「じゃあ、頼んだ、俺は隣の部屋にいるから」

樹さんが間続きになってる自分の部屋へと移動した。
部屋に敦也さんと二人で取り残される。
「まあ、どこかに座りなよ、ベッドにでも」
言われたとおりに、ベッドに座る。
敦也さんは椅子を出してきて座った。

「お互いにいろいろ思うところはあると思うけど、少し話をする気はない?俺は今回の事についていろいろな事を知ってるよ」
あれだけの説明でまさか十分なわけじゃないよね、と。
「でも、それを知ったとして僕に何かできることがありますか?」
こんな言葉を聴いても敦也さんは話すのをやめなかった。
「やっと話してくれたね。たしかにできる事は多くないかもしれないけど、状況をほとんど何も知らないよりは、選択肢は多くなると思う」
「僕がお話できる事は何もありませんけど」
「まあ、そういわず。俺がきくことに答えてくれればいい。その代わり、君も俺に好きな質問をしていい、こういうのはどう?」
悪いとは思わなかったから、頷いた。
「じゃあ、空流くんからどうぞ」
空流くん、ってこの人そう呼ばれるのになぜか既視感を覚えた。
そう呼ぶ誰かに似ているのかもしれない。
そんな人間は決して多くないはずなのに。