君ト描ク青空ナ未来 --完結--
4
ミーンミンミンミーン…
蝉が鳴いてる…。
それにしても、今日はやけに涼しい…。
いつも蝉が鳴いてる日は死にそうなくらいに暑いっていうのに。
それに、床もやわらかい。
目を開けるのがおっくうだ。
それでも、食事を運んでこられるまでに起きないと酷く叩かれる。
あれは痛いから、嫌だ。
目を開けると、いつもの薄暗い倉庫の天井じゃなくて、真っ白な天井が目に入った。
「なに・・・?」
見た事もないようなやわらかくて広いベッドに寝てた。
体を起こしてみる。
蝉の声が聞こえるのは窓の外から。
外は日差しが強い夏の一日。
この部屋の中は冷房が効いてて涼しい。
大きなベッドに立派な調度品。
あの家の母屋の中のどっかの部屋なんだろうか…?
なんで僕はこんな所にいるんだ…?
たしか、倉庫の鍵があいてて、ひたすら走ったんだった。
歩けなくなって、這ってでも進まないといけないと思って…。
それから、意識がなくなった。
それからどうなったのかはわからない。
見つかって、連れ戻されたのかもしれない。
こんな立派な部屋に僕を入れるなんて、どういう風の吹き回しかはわからないけれど。
もしかしたらもう死んでしまったから、こんな幸せな環境にいるのかな・・・?
コンコン
部屋のノックされる音がした。
ドアを見て、身構える。
あそこから入ってくるのが、あの人たちだったら…。
酷く叩かれるかもしれない。
殺されるのかもしれない。
そんなの、嫌だ…。
あの人たちが入ってこないうちに、逃げないと…。
ベッドから下りて、窓の方へ行こうとしたけれど、足を床に付いた瞬間に激痛が走ってその場に倒れ込んだ。
ドアが開く音がした。
こっちに歩いてくる人の足音だけをきいた。
自分の命のカウントダウンだと思いながら。
「大丈夫ですか?」
でも、聞こえてきたのは全く知らない声。
顔を上げると、全く見知らぬ人。
スーツを着てて、髪をきっちり撫でつけた人。
こんな状況なのに男前だなって考えざるをえないほどかっこいい人。
その人の顔に見とれてる間に、抱き上げられてベッドへ戻された。
ここはどこで、この人はだれなんだ…?
意識を失ったあと、僕はどうしんだろう…。
浮かんでくるのは疑問ばかりで、この人に何か言わなければいけないのに、頭の中が整理できない。
「目が醒めて、よかった。もう丸2日くらい眠ったままだったんですよ」
その人はベッドの傍まで椅子を持ってきて、それに腰掛けた。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-