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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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27

「お帰りなさいませ」
加川に迎えられて、家の中へ。
後ろには喜田川。
できるだけ早く帰ってこようと頑張ったのに、結局遅い時間になってしまった。
「空流は?」
「まだ起きてらっしゃると思いますよ。とはいっても先ほどは相当眠そうでしたが」
「ちょっと見てくる。喜田川は書斎で待っててくれ」
「はい」

二人が2階に上がっていくのを見て、空流の部屋のドアをたたいた。
電気はついているみたいなのに、返答はない。
そっとドアを開けてみると、電気をつけたままベッドで布団も掛けずに寝てた。
「まったく、風邪をひきますよ?」
そういっても、夢の中の相手には届かない。
布団をかけようとすると、靴のカタログが開いたまま置いてあることに気づいた。
このページのものが気に入ったのか。
そう思って、布団をかけて電気を消してから、もう少しだけ仕事を片付けるために書斎へ行った。

仕事を終って、軽食を加川が準備をしてくれている間に空流の部屋にあったカタログを眺める。
「誠司さま、そのカタログは・・・」
「空流が開きっ放しで寝ていた」
「大変悩んでらっしゃいましたよ」
「このページが開いたままベッドにおきっぱなしだった」
「結局それにしたんでしょうか」
「ん?」
「いえ、その靴ともう一つでとても悩んでいましたので。それは昔欲しかった靴にとてもよく似ていて、もう一つのほうは単純に気に入ったようですよ」
「どれだ?」
加川にカタログを渡して、探させる。
「これです」
指差す靴はさっきのものとは全然違っていた。
「これなら両方あっても困る事がないか」
両方の注文をしてしまうことを心に決めて、カタログを閉じた。

「楽しみですね。これが届くころにはきっと、空流さまの足も治ってるでしょうから」

注文してから届くまで約一週間か。

「加川、もし私の仕事中に届いても開けないで待っていてくれないか」
「ええ、もちろんそのつもりです。誠司さまからのプレゼントですから。誠司さまが帰るまで荷物はどこか目立たないところにでもしまっておきます」
「頼む」

翌朝、空流には、カタログが開きっ放しだったページの靴を注文しておいたとだけ伝えた。

注文を済ませてからの一週間は、いつ届くかと気が気でなかった。
自分のものでもないのに。
できるだけ早く仕事を済ませ、夕飯の時間には帰るようにし、接待も全て丁重に断った。

注文してから1日や2日で届く訳がないのにもしかしたら、という期待がある。
届くのを待つ間にも回復は順調に進む。
栄養が充分で、健康な若い体の回復は早い。

そして、注文を済ましてから丁度一週間たった日。

家へ帰ってくると同時に、驚いた。
「お帰りなさいませ」
加川がそういって出迎えてくるのはいつものこと。
その後ろにいる空流が、今日は自分の足で立っていた。
「空流・・・?」
「今日、立ってみたら意外と歩けました」
ちょっとはにかみながら笑って、そう言った。

「おめでとうございます」
かつてないくらいに顔が緩んでいるのがわかった。
思わず空流を抱きしめる。
「治ったんですね・・・良かった。本当に」

「誠司さま、昼に宅配便が来ましたよ。」
それは、もちろんこの一週間待ちわびた届け物。
「どこに?」
「そろそろお帰りになる頃だと思ってリビングに運んでおきました」
加川に礼を言って、すぐに空流に向き直った。
「空流、リビングに来てください。この前の靴が届いています」