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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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26

「行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃい」
加川さんと二人でそう言って見送りをした。
「行ってきます」
誠司さんを迎えに来たのは、喜田川さんという誠司さんの秘書の人らしい。
「あ、そうだ。喜田川、頼んでおいたものは?」
「車の中に」
「悪いが持ってきてくれないか?」
「はい、お待ちください」
喜田川さんがそう言って外へ出た。
でもすぐに戻って来て誠司さんに数冊のパンフレットみたいなものを渡した。
「昨日の今日ではさすがに3社分しか手に入りませんでした」
「十分だ、ありがとう」
パンフレットみたいなのを受け取った誠司さんがこっちを向いて、それを僕に差し出した。
「どうぞ」
「え?」
いきなり差し出されても、わけがわからない。
「靴のカタログです。私が帰るまでに好きなものを選んでおいてください。遅くなるかもしれませんので、先に寝てていいですからね」
意味は解ったけど、のみこめなかった。
靴を買ってくれるために、カタログを・・・・?
「さ、受け取ってください」
「は、はい」
なんとなく手を出して受け取ってしまった。
「それでは、行ってきます」
「失礼します」
誠司さんと喜田川さんがそう言って、出て行った。

加川さんと二人、玄関にとりのこされる。
「あ、これ・・・どうしましょう・・・」
つい流れで受け取ってしまったカタログを指す。
「何か迷うことがありますか?」
「いえ、本当に受け取っていいのかなあ、って・・・」
「いいと思いますよ。そのほうが誠司さまも喜ぶでしょうし。とりあえず見てみたらいかがです?リビングのソファででも。ミルクティでも淹れましょう」
「あ、ありがとうございます」
「いえ、ではそちらで」

誠司さんがいるときは使うことのなかったリビングのソファ。
車椅子から立てるようになったから、もうここを使うことができる。
ゆっくりと車椅子から立ち上がって、ソファに腰を落とした。

カタログを一冊開く。
靴がたくさん並んでた。
どれもカッコいいデザインのものばっかりだ。
それでいて、誠司さんが贈ってくれた服によく合いそう。

ページをめくっていって、写真のページが終わりになると2冊目へ。
2冊目の真ん中あたりのページをめくった瞬間に目を奪われた。

中3のときに、町を歩いてる途中に見つけた靴に似てたから。
欲しかったけど、8000円もした。
当然、買えなかった。

その靴にすごく良く似てる。
欲しいと思う気持ちなんてずっと忘れてたけど・・・欲しい。

しばらくそこで目を止めた後にページをめくる。
2冊目の最後のページにまたもや目をひくものがあった。
単純にかっこよかった。
さっきのとどっちがいいかなんて選べないくらい。

「いかがですか」
加川さんが声をかけてきてくれた。ミルクティーをテーブルにおいてくれる。
「ありがとうございます。なんか本当にどれもかっこいいのばっかりで・・・。」
「そうですか。とくに気に入ったものは?」
「うーん・・・これとこれが昔欲しかった靴にすごくにてて・・・・。あとこれはすごくかっこいいと思うんですけど・・・。」
「はい」
「でも、ホントに、いいのかなって思って・・・。」
そういうと、加川さんがすごく優しく微笑んだ。
その微笑み方がなんとなく誠司さんに似てる気がした。
「誠司様は嘘はいいませんよ。ああおっしゃったんですから、好きなのを選んでください」
誠司さんに似た微笑でそういわれたからうなずいてしまった。
誠司さんの養育係だったってことは、育ての親。
やっぱりこういうところは似るのかな、なんて思う。
「じゃあ、どっちにするか考えます」
そういうと加川さんは台所へと去っていった。

どっちにするかなんて、決められない・・・。
安い方にしようと思って、最後のページにまとめてかいてある値段を見たら・・・・どっちが安いとかそんなことはどうでもよくなるレベルだった。

・・・だって、桁が違う。
中3のあの時、8000円の靴を買うことを諦めたことなんてバカみたいに思えてくる。
「やっぱり住む世界が違うんだなー・・・。」
そんなことを一人ごちにつぶやいながら、パンフレットを机の上に置いた。