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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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17

家へ戻って、空流を部屋へ。
昨日探した本を渡すと、嬉々として読み始めた。
昼食の用意ができたら呼びに来るとだけ言って部屋を出た。
どうやら本当に本が好きらしい。
邪魔をしないのが一番だろう。

「誠司さま、仲原さまからお電話がありました。」

それを聞いて、かけなおす為に書斎へ行った。
それでもまだ仕事中の時間。
昼休み時間を回るのを待ってから、コールをならした。

しつこいくらいにコールを鳴らしたあと、電話がつながった。
『悪い、待たせた。誠司か?』
「ああ、さっき電話もらったみたいだな。出れなくてすまん」
『いや、それより、どうするか大体決まったぜ?』
さすが、行動が早い。
「恩にきる。それで?」
『俺と、耳鼻咽喉科の人をひとり連れてく。それで俺はそのまま休暇に入って、空流くんとやらが治るまで何日かいたいと思ってるけど、いいか?』
「治るまで、か・・・」
いつになるのか、はっきりと分かれば楽なのに。
こころの病気は全治までにどのくらいかかるのかがわからない。
『多分、数日で治るとは思う。心因性の失声症はほっといても1週間以内に治るのが一般的だし、今は精神的に落ち着いてるだろ?』
「ああ」
『一応見てみないことには何とも言えないけどな。そっちには3日くらい滞在させてもらうことになるかもしれない。それでダメならまた相談だ。あ、それから世話になる訳だし、交通費はいいよ。咽喉科の人を一人連れてくからその人には約束した報酬を頼む』
「わかった」
『それで出発の日は?』
「できるだけ早い方がいいな。明日でもいいくらいだ。私の休暇も長くはないから」
『本当に明日いくぞ?』
「ああ、頼む。」
『じゃあ平良さんにも話通しておく。あ、平良さんって咽喉科の人な。明日の昼頃にそっちに着くように行くと思う』
「わかった、待ってる。車で来るだろう?場所はわかるよな」
『ああ、頼む。平良さんも俺の車に乗せてくよ。急で悪いな』
「いや、それはこっちの台詞だろ。あと、空流にはなんていえばいい?」
『俺のことか?』
「今は、近日中に友達が来るから会って欲しいとだけ言ってある」
『言っていいぞ、心療内科の医者だって。いいにくければ別にいいけど』
「もし言える機会があったら言っておく」
『わかった、じゃあ明日な』
「ああ、待ってる」

受話器を置いて、息をつく。
さすがに頼りになる。それに仕事が速い。
そのマメさが今も付き合いが続く理由なのかもしれない。

ドアのノックの音がした。
「失礼します。誠司さま、昼食の用意ができました」
「ああ。空流は?」
「もうご自分で食堂のほうにいらしてますよ。
それを聞いて、また少し嬉しくなる。
それと、なぜか一抹の寂しさ。
もう私の手はあまり必要ないのかもしれないと思うと、それも少し寂しい。
今からこんなんでは、声が出るようになって足の怪我が治った時にどうなることやら。


食堂に入ると、空流は用意された席に車椅子を上手く入れていた。
自分と加川も席について、食事。
「明日、俊弥ともう一人、客が来る」
医者だと言う事は言い出せないまま、加川にそう伝えた。
「はい」
「俊弥は3日ほど滞在するそうだ」
「わかりました。到着の予定は?」
「明日の昼ごろに俊弥の車が着く予定だ。二人の分も昼食を頼む」
「わかりました。仲原様ともうお一人は・・」
「平良さん、だそう。空流、あなたに会って欲しいといった私の友人と、もう一人です。あなたに会っていただきたくて呼びました」
『どうして・・・?』
「俊弥は心療内科の医者です。私と面識はありませんが平良さんは耳鼻咽喉科の医師。あなたの声を直すために、私が呼びました」
食事をする空流の手が止まった。
「何も心配する事はありません。俊弥は本当に私の友人ですし、カウンセリングの間に私も同席できるよう、頼んでみます」
その一言で空流が安心したような表情を浮かべた。
そんな些細なことで心が少し浮くような、そんな気分になる。
こんなことで喜ぶなんて、もしかしたら私の方がどうかしてしまったのかもしれない。

自分にも俊弥のカウンセリングが必要かもしれない。
皮肉半分にそんなことを考えた。

でも今は、空流がどんな声をしているのか、それを早く聞きたい。
俊弥が来ることが決まった今、頭の中はほとんどその考えに占められていた。