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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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15

暗くて、冷たい・・・。
そう思ったら、冷たさはすぐに灼熱の暑さに。
埃っぽい倉庫の床。

あの人が来る前に、起きないと・・・。
今日は機嫌が悪くないと良い・・・。

ん?何か、動いた・・・?
もしかして、もうあの人がいる!?

そう思って、飛び起きた。

周りを見ると、朝日がカーテン越しに差し込んでくる部屋。
寝てるのはベッドの上。

「すみません、起こしてしまいましたか?」
誠司さんが上から僕の顔を覗きこんで、そう言った。
慌てて首を振る。
タオルが差し出されて、自分がすごい汗をかいてることを知った。

「大丈夫ですか?うなされてたので起こした方がいいかとも思ったのですが」
タオルを受け取って顔に当てる。
寝てるときは、まだあの暗い倉庫の中にいると体が思ってる。

もう思い出したくもないのに。

「寝直しますか?まだ早い時間です」
時計を見ると朝の7時だった。
首を振って、ベッドから降りようとした。
けどすぐに止められる。
足を床に着くと激痛に襲われるのを思い出した。
しばらくは、何も出来ない生活・・・。

「そういえば、昨日いいものを見つけたんですよ」
誠司さんが持ってきたのは、車椅子。
「昔私が使ってたものですが、これなら、歩けなくても自分で移動できます」
さすがに横抱きにされる移動手段は恥ずかしいし、誠司さんに頼らないと何もできないのがすごく迷惑な気がして嫌だったから、それはとてもありがたかった。
「顔を洗いに行きますか?」
頷いて車椅子に乗せてもらった。

見ると、誠司さんはもう着替え終わって身なりも整えてる。

もしかして、寝坊した・・・?
まずい、昨日もあんな粗相をしでかしてしまったばっかりなのに・・・昨日の今日で寝坊なんて。
そもそも昨日、部屋で誠司さんを待っているときに眠くなって、帰ってきたら体を起こせば良いと思って・・・そのまま起きた覚えが無い。

どうしてこう、最悪なことばっかり続くんだ・・・。

後ろで車椅子を押してくれてる誠司さんの顔は見えない。
もしかしたら、怒ってるのかもしれない・・・。
それで僕に顔を見せまいとして、後ろに・・・?

恐る恐る、後ろを見る。
もし誠司さんが怒ってたら・・・どうしたらいい?
どうすれば許してもらえる・・・?

「どうしました?」

振り向いたことに気付いて、声をかけられた。
その声に怒っている様子が無い事に少し安心する。

『寝坊して、ごめんなさい』
わかってもらえるかわからないけれど、口を動かした。
誠司さんは驚いた顔をした後に、すこしだけ微笑んだ。
話しやすいように、車椅子を止めて、僕と向かい合うように廊下にしゃがんだ。
「寝坊したと思ったんですか?」
頷く。
「それで私が怒っていると?」
素直に頷いていいものか迷ったけれど、結局あいまいに頷いた。
「昨日、少し約束が足りませんでしたね」
いきなりそういわれても何の事かわからなかった。
「もう一つ、約束を付け足しましょう。今度は私が空流に約束します。私も思ったことは必ず正直にあなたに伝えます。怒っているときには怒っていると言います。だから、あなたが私の顔色を伺う必要はありません。いいですか?」
また、頷いた。
「空流には全て本音で話をします。怒ってない、というときには本当に怒ってません。いい、と言う時には本当にいいんです。言葉の裏を読む必要なんてありません。そんなに肩に力を入れないで、ここにいてください」
両肩を軽く叩かれて、肩に力が入ってることが初めてわかった。
『・・・はい』
そう口を動かすと、誠司さんが後ろに戻ってまた車椅子を押し始めた。

「そうだ、近日中に私の友人がここへ来ます。ぜひ空流に会っていただきたいんですが、会っていただけますか?」
即座に頷いた。
知らない人に会うのは怖いけど、誠司さんの望む事は、なんでも聞きたかったから。