小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|143ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

第四部・20話〜


20

空流の部屋で、3人が顔を合わせている。
「いきなり尋ねてきてごめんね。はい、これ今日のノートのコピー」
「あ、ありがと」
部屋に入って、いつもと変わらぬ調子で話し出したのは圭介。
「心配したよ。空流が風邪引いたの僕らのせいかもって思って。空流にまだ言ってなかったことがあるんだ。昨日は僕の頭の中も色々ごちゃごちゃしてて言えなかったんだけど・・・盗み聞きしたりしてごめん」
「え?」
圭介の口からでた言葉はあまりに予想外で、空流が用意していた言葉を吹き飛ばす。
「ほら、真志もそのこと謝るんでしょ?」
饒舌に喋る圭介の横で、真志は憮然としたまま。
「あのね、二人とも。聞いてほしいことがあるんだ」
真志の返事を待たぬまま、空流が切り出した。
「二人を迎えにいってくれた人が鷹島誠司さん。僕の命の恩人」
大げさとも思えるその言葉に、真志も空流の方を向いた。
「今までちゃんと話そうとしなくてごめん。でも4月からの半年間は、とても普通じゃ信じてもらえないような激動の半年だったんだ。4月に母が他界したことは、真志も知ってるよね?それからの話をしようと思うんだけど・・・・・」
「空流、待って!ごめん、僕らは空流に無理に話させようと思って、今日来たわけじゃないんだ。ただ、僕らが盗み聞きしたせいで、風邪ひかせちゃったことを謝りたかっただけなんだ。だから無理に話そうとしなくていいよ」
「ううん、僕も昨日じっくり考えたんだ。二人にいままであったこと全部話そうって思ったから、話聞いて欲しい・・・真志にも」
真志の目がやっと空流の目へ向く。
話を聞いてくれる気になったよう。
「4月に、親戚に引き取られたんだ。引き取られたっていうか、連れてかれたみたいな感じだったけどね・・・」
そこでわかった声の出ない病気。強いられた生活。
やっとの思いで抜け出して、助けられた先が鷹島の別邸。
でも、自分はそこからも逃げ出して、勝手に働いて。
そして、俊弥の説得に負け、誠司に会いに行こうとした矢先のこと。
再び、空流の身柄は一ノ宮に戻った。
そして再び鷹島誠司に助けられ、今に至る。今は誠司のことを愛しく思っていて、向こうもそう思ってくれているようだ、と。
話を聞き終わった二人は驚きで何を言ったらいいのかわからないという困惑がにじみ出ていた。

「矢口の言ったことは、ある意味では嘘じゃないって思ったんだ。事情を知らない人からみれば、僕と誠司さんの関係はそう言う風にしかみえないかもしれないって・・・」
「そんなのっ・・・!」
「あいつの言ったことなんて全部嘘だよ!」
勢いよくそう言ったのは真志。
「空流。俺・・・本当にごめん。そんな事情があったなんて知らなくて、傷つけるようなことたくさん言ったよな・・・」
さっきの勢いは嘘みたいに、体を丸めて、小さい声で言った。
「もともとは、僕がちゃんと話さなかったのがいけないんだ」
「でも、こんな事情抱えてたら簡単に話せないの当たり前だったのに」
「親戚の家にいるって言ったの嘘だったんだ。今のこの生活を真志に知られたら、僕が変わっちゃったって思われるじゃないかって。僕がいることを喜んでくれる真志がすごく嬉しかったから・・・」
「俺、無神経だったな・・・知らず知らずのうちに、空流にそんなプレッシャーかけてたなんて全然気がつかなかった」
「真志が悪いんじゃないよ。本当にもっと最初から色々話せばよかった。ごめん」
「俺も、もっとちゃんと空流の話聞こうとすればよかったよな。ごめん」
互いにうつむきあう二人の肩を圭介が叩く。
「はいはい。謝り合いはここまでにしよう。仲直り完了ってことで。僕らには他に考えなきゃいけないことがあるでしょ?」
「え?」
空流も真志も、不思議そうな顔。
「矢口のこと。とりあえずあいつのこと黙らせないと問題は解決しないと思うけど」
なんだか圭介の口調がいつもと違う気がすると思ったのは空流だけではないようで、真志と目が合った。
「あ、でも、空流は今病み上がりだし、今はやめといたほうがよさそうだね。明日は学校来れそう?」
「うん」
「それじゃ、明日学校で話そう。今日はそろそろ帰るよ」
「だな。あんまり話してると体にもまだ良くないだろうし」
教科書が詰まった学校鞄と部活道具が詰まったスポーツバッグをそれぞれ持ち上げる。
空流の部屋をでる直前に真志が振り返った。
「えっと・・・迎えにきれくれた人って鷹島さん?だっけ?」
「うん、誠司さんがどうかした?」
「なんか、いい人だな」
真志らしく歯を見せて笑った。
好きな人が褒められるというのは、自分も嬉しい。
「そう思ってもらえて、よかった」
空流も、ここ数日こんな風に笑顔になったことはなかったなと思う。
玄関まで二人を見送るときには、誠司も出てきてくれた。
「空流のこと、よろしくお願いします」
親友二人に向かって言う誠司に、なんとなく空流は面映い。
「はい、任せてください」
自身満々に請け負う二人にまた恥ずかしい思いをしたのだけれど、気分は最高に良かった。