君ト描ク青空ナ未来 --完結--
19
昼時を過ぎたころ、目が覚めた。
汗で濡れてしまったパジャマを着替えようと思って体を起こしたら、濡れタオルが落ちた。
「あれ・・?」
自分でやった覚えなんてないのに。
まさか、誠司さんが帰ってきた・・・?
部屋の扉を開けると、キッチンから音がする。
「誠司さん?」
「じゃなくて、申し訳ないね」
「敦也さん!」
「久しぶり。鷹島さんに聞いたからお見舞いに来たよ。いろいろ勝手に使わせてもらってるよ」
空流の傍にかがみこんで、おでこに手をあてる。
「大分熱は下がったみたいだね。なにか食べれる?」
「はい。わざわざありがとうございます」
きっと空流の具合を見るように誠司が頼んでくれたのだろう。
「病人はそんなこと気にしなくていいの。インスタントで悪いんだけどおかゆ作ってあげるからもうちょっと横になってなよ」
その言葉に甘えて、ベッドに横になりにいった。
しばらくすると部屋に敦也が入ってくる。
「食べれる?」
茶碗にはいったおかゆを手渡される。
「はい」
それを全部食べて、横になるとまたすぐに眠くなった。
玄関のドアが閉まる音で目が覚めた。
ちゃんとお礼も言わないうちに敦也が帰ってしまったのかもしれないと思い、追いかけようと体を起こした。
もう体はいつもどおりの健康を取り戻しつつある。
部屋を出ると、誠司の姿が目に留まった。
「あ、おかえりなさい」
誠司が帰ってくるということは、もうきっと外は暗いのだろう。随分眠り続けていたようだ。
「ただいま。もう起きて大丈夫なんですか?」
「はい。一日中寝てたらすっかり元気です。敦也さんのこと、ありがとうございました」
「いいえ。元気になったのなら良かった。私は仕事に都合がつけられなくて・・・」
誠司はそういうけれど、自分のせいで仕事を休まれたりしたら責任を感じてしまうから、仕事に行ってくれてよかったと思う。
「ところで・・・病み上がりなのはわかってるんですが、少し話ができるくらいの元気はありますか?」
「はい。それくらいなら全然大丈夫ですけど・・・?」
昨日あれだけ話したのに、まだ足りないことでもあったのだろうかと誠司を見る。
「といっても、話す相手は私ではないんです」
「え?」
「マンションの下に、清藍の制服を着た子が二人いるので、もしかしたらと思ったのですが・・・」
「まさか・・・」
「ええ、あなたのお友だちかと」
今日、学校を休んだ空流を見舞いに来てくれたのかもしれない。
しかも二人ということは・・・圭介に・・・真志も来てくれたのかも!
けれど、このマンションはオートロックだし、管理人さんも見慣れない顔には厳しい。
部屋番号で呼び出してもらっても、ずっと寝ていた空流は気がつかなかった。
「迎えにいってきます!」
慌てて飛び出そうとする空流を誠司が止める。
「その格好じゃ出歩けないし、まだ病み上がりです。私が迎えに行ってきますから、空流はベッドにいてください」
有無をいわさず、誠司がもう一度靴をはいて、出て行った。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-