小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|133ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

第四部・10話〜


10

雨が降っている気配で、目が覚めた。
不安ごとがあるとよく眠れない。だからこんな夜中に起きだしてしまう。
時計をみるとまだ朝の4時。外は真っ暗だ。
隣に眠る誠司を起こさないように、そっとベッドを抜け出した。
全然眠れた気はしないけれど、これ以上眠れる気もしない。

ベッドを抜けたのはいいけれど、何をする気も起きなくて、リビングのカーテンを開けて外を見た。雨が入ってこないように少しだけベランダの窓ガラスを開ける。
そのまま窓へ張り付くように床に座り込んで、雨の音を聞いた。
ぼうっと座っていると、頭に浮かんでくるのは友人のこと。

学校の駐車場で話したのが、一昨日のこと。
昨日は真志は一度も目を合わせてもくれなかった。
圭介はいつも通りで、真志は感情に任せて思ってもないことも言っているだけだから気にするなと言ってくれたけれど・・・。それでも、真志と一度も話さないどころか、目が合うことすらない一日に感じる寂しさは耐え難い。
しかも、真志はあんなに仲が良かった圭介とも話さなくなるほど、ずごく怒っていた・・・。
でも、空流があの噂をきっぱりと否定できない以上、真志の怒りを解く方法は見つからない。
できるならまた、以前のような友達関係に戻りたいけれど・・・一体どうすればできるのか・・・。
いくら考えてみても答えはでない。

「ずいぶん早起きですね」
誠司がリビングへのドアを開けた。
「あ、ごめんなさい。起こしちゃいましたか」
「いいえ。たまたま目が覚めたんです」
それがうそである事くらいは空流にもわかる。
「一度目が覚めると眠れない性質なんですよ」
いいながら空流の隣に座る。誠司が床に座るなんて見たことがなかった。
「今日は一日ずっと雨みたいですね」
そう言ったきり空流の肩を抱いて、ずっと隣に座っていてくれる。
その手から全身に暖かさが伝わってくるような気がした。
ぴちゃん、ぴちゃん、と水滴の垂れる音がする。
誠司の肩に頭を預けてその音を聞いているうちに、いつのまにか寝入ってしまった。

次に目が覚めたのは朝、ちゃんとベッドの上で目が覚めた。
夜中に起こした上にベッドに運んでもらったようだ。
時計をみると、いつも起きる時間よりも大分遅い時間。
「あ・・・」
この時間に起きたのでは、朝ごはんは作れそうもない。
さらに申し訳ない気持ちを増しながら、居間へ向かった。
「おはようございます」
すでに着替えも済ませていた誠司はテーブルに朝食を並べているところだった。
「空流の真似をしようとしたんですが・・・なかなか上手く行きませんでした」
テーブルの上にあるのは、ちょっと焼きすぎたパン。
「でも、コーヒーには自身がありますよ」
とはいっても、インスタントコーヒーなのだが、差し出されたのはミルクと砂糖がたくさんはいったもの。一口飲んでみると空流の好みどおりに作られていることがわかる。
元気付けようとしてくれている、その気持ちが嬉しかった。