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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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空流が二人に別れをいって教室を出た後、圭介と真志は心配そうに目を見合わせた。
明らかに意気消沈している空流を見てられなかった。
「空流って、理社と数学が苦手?」
空流の実力テストの全教科の点数を知ってる圭介は、中学が同じ真志に聞いてみる。
「いんや、中学のころはなんでも出来た。中学では空流はいつもトップ争いしてたし」
「そっか。数学はあの問題じゃ仕方ないにしても・・・。理社のテストの点数の悪さ、空流にしては異常だったよね。世界史も政経も好きだって言ってたし、生物だってそんなに苦手そうじゃないと思うんだけど・・・」
「前の学校のに比べてテスト難しすぎるとか?」
「数学は多分そうだよね。でも理社ってあんまり覚えることは変わらないし、関係ないと思うけど・・・。ところで、どこの学校にいたんだろ?」
「うーん・・・ちょっとまって。俺ぜったい知ってる」
中学校時代、ちらほら聞いた噂を思い出す。誰がどこに受かったとか受からなかったとか・・・確かその中に空流の名前も・・・。
「真志の住んでるとこから行きやすいところで、偏差値高い公立だと・・・緑丘とか?」
「あ、そう!それ!」
そんな公立は自分には圏外だから思いつかなかったといいながら笑う真志。
「僕は、清藍に合格しなかったら緑丘もいいなって考えてたよ」
「おー、公立の方がテストとか難しくないなら、ちょっと羨ましいなあ」
「その代わり公立じゃあ、今ほど思いっきりサッカーできないと思うけどね」
「それ言うなって」
冗談ではあるが、辛辣な言葉に苦笑い。
「んじゃ、そろそろ俺は思いっきりサッカーしに行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
真志を送り出した後、少し勉強してから帰ろうと思って席に座る。
クラスにはまだ何人か残っていて、思い思いに話をしたり、一緒に勉強をしたりしていた。
勉強をするのに雑音が気にならないタイプの圭介は、別段気にもせずに一人で黙々と勉強をする。
そのうちに、教室に残っている人数も減ってきて、ふと教室を見渡すと数人のグループが残っているだけだった。

圭介が手洗いへ立って、教室へ戻ろうと思うと、ドアが開け放してある中から自分の名前が聞こえてきた。つい、中の人たちにみられないように身を隠す。聞こえてくるのは二人分の声。
「編入生っていうから守屋レベルに出来るのかと思えば、ぜんっぜん大したことないじゃん」
話されているのはどうやら空流のこと。
「うちの学校で編入ってけっこう異例らしいよ」
「そうそう、前に俺の親父の取引先の息子ってのが清藍に入りたかったらしくてさ。編入試験について問い合わせたけど公募はしてないって断られたって。ってことは、考えられないくらい寄付金積んだんかね?」
「寺山ん家ってそんなに金持ちなの?でも戸部と同中ってことは、公立中だろ?」
推理に行き詰まったらしく、声が止んだ。
「俺、知ってるよ」
会話に加わる新たな声。矢口かな、とあたりをつける。いわゆる嫌味な奴であまりクラスメイトからは好かれていない。
「理事長のコネだってさ。俺の親父がここの学校の役員してるから知ってるんだ」
「なにそれ?」
「どういうこと?」
普段は矢口のことなどあまり相手にしないクラスメイトたちだが、興味深そうな話につい耳を傾ける。
「そのまんまだよ。理事長のごり押し。めちゃくちゃ寄付金積まれたり、断れない付き合いの人からの圧力だったり、理由はいろいろあるかもね」
「理事長へのコネか。そんで臨時の編入試験が開かれるってすげー」
「しかも、編入試験っていっても形だけだろ?」
「この順位とるやつで合格なら、絶対そうだよなぁ」
それ以上空流についての心無い噂を聞くに堪えなくて、わざと音を立てながら教室へ入った。空流と圭介の仲のよさを知っているクラスメイトたちはさすがに口をつぐみ、教室を出て行った。
結局、教室に一人きりになる。もう勉強を続ける気にもなれずに、片付け始めた。
「・・・なんか大変なことになりそうだなあ・・・」
ため息をついて、圭介も教室を出た。


翌日の放課後、圭介は自分の予感が的中していたことにうんざりとしながらため息をついた。
さすがに空流のいる3組では声高には言うものはいないが、他クラスの人たちが空流の編入についていぶかしむ声があるらしい。
悪い噂は伝わるスピードは早いものだというが、たった3クラスしかない学校、しかも珍しい編入生ともなればそのスピードの速さにも頷けた。
その噂の内容というのも『ここへの編入は理事長のコネと寄付金のおかげらしい』と。
3組では噂が声高に囁かれないからか、空流の耳に入っていなかったのが幸いといえば幸い。最初のこの噂を圭介に伝えたのは他クラスに多く友人のいる真志だった。
「圭介、なんか俺1・2組の連中から信じられねぇ噂聞いたんだけど」
憤りも覚めやらぬままに、圭介のところへ真志がやってきた。
「何怒ってるの?」
「そりゃこんな酷い話聞けば怒りもするだろ」
他クラスで聞いてきたらしい噂を話し出す真志だが、さらに尾ひれがついていた。
『前の高校で問題を起こして退学になり、理事長のコネと多額の寄付金でここへ入ってきたらしい』と。
「ったく、酷い噂だよな」
「そうだね」
と言いながら、圭介は冷静に考える。
でも、確かに編入試験があるなんて話は聞いたことないなあ・・・と。
「俺、空流が問題起こして退学になったんじゃないこと証明するよ。サッカーつながりで緑丘に友達がいるし」
「真志、それはやりすぎじゃない?」
「だって!見てられないだろ。こんな噂流されてるの」
「でも、余計なことはしないほうがいいよ」
「余計なことなんかじゃない。俺は空流の潔白を証明するんだ」
言い切って、真志は教室を出て行ってしまった。
「あーあ・・・」
あの真っ直ぐさが真志のいい所でもあるのだけれど、と苦笑い。

教室を飛び出した真志をあのまま放っておいたことは、後々圭介の後悔となる。