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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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金曜日、空流の頭の中はテスト用紙を見た瞬間に真っ白になった。

国語はまだいい。英語もそれなり。
けれど、数学がこの間の宿題テスト並みに難しい問題が大半。最初のほうにあるちょっとした計算問題くらいにしか手が出せず、提出となった。
編入試験の科目になかった理科系と社会系の科目は、壊滅的。この一週間ごときの付け焼刃で追いつけるはずもなかった。

一週間後には、順位が教室に貼り出されるらしい。


その日は、初めて学校にいきたくないと思った。
「どうしました?気分がすぐれませんか?」
誠司が朝ごはんを食べながら心配そうに空流の顔を覗き込む。
「大丈夫・・・です」
「そうはとても見えません。学校は休んだほうが・・・」
その甘い誘惑に一瞬でも引き込まれそうになった自分を叱咤する。
「学校には行きます。実は、今日はこの間の実力テストの順位表が貼り出される日で・・・たぶんいい成績がとれてないからちょっと気が重いだけです」
そう言って朝食の食器を片付けながらため息をついた。
「大丈夫、まだ始まったばかりです。たとえ今はいい成績を残せなくても、大事なのはこれからですよ」
食器を洗っているとうしろから優しい声がして、ふわりと抱きしめられる。
ちょっとだけそれに甘えて、後ろへよりかかった。
「それにいい成績を残すことだけが高校生活ではありません。留年しない程度にがんばってくれれば充分ですよ」
心地よい声に身をゆだねてしまいそうになる。
でも友達と、一緒に上を目指していくと約束をしたから、自分は頑張ると決めている。
それでも、こうして心に張り詰めた糸を緩めてくれる誠司の言葉はいつも苦しい思いから空流を救い上げてくれた。
「そんなに無理してがんばらなくてもいいですよ」
髪を撫でられて、キスが落とされる。
落ち込んでるときや苦しいとき、いつでも誠司の言葉は空流を浮上させる。
さっきまで、あんなに学校へ行くのが嫌だったのに、今はもう学校へ行く気持ちになっていた。
「大丈夫、です」
それを言う空流の顔をもう一度誠司が覗き込む。
その顔を見て安心したのか、誠司が微笑んだ。
「でも、本当に無理はしないでくださいね」
空流の両肩に手をのせ、頬にひとつキスを残して、離れていった。

本当に甘やかされてるなあ・・・。

そんなことを思いながら、学校へいく準備を整えて家を出た。

真志の話によると、どうやら順位表が貼り出されるのは放課後らしい。それまでは普段と変わらぬ生活を送ったが、放課後が近づくにつれて、気分が重くなっていくのはどうしようもなかった。
帰りのHRのために教室にきた先生の持っている紙をみて、隣の席の圭介が「あれが多分順位表だよ」と囁く。
だからなのか、なんとなく教室全体がぴりぴりしているような気がした。

「それじゃあ、順位表はっておくから、各自みておいてね。今日はこれで終わり」
起立、きをつけ、さようなら、と挨拶をして、先生が去った。同時に順位表へみんな群がる。
1番後ろの席というのもあって、なんとなくそれに乗り遅れてしまった。
隣の圭介もあの人ごみに飛び込む気はないらしいし、スポ薦の人たちはそこまで学業の順位は気にならないらしい。
「順位表みるの、やだなぁ・・・」
なんて呟いている間にも、順位を確認し終わった人たちが次々ひいていった。
人ごみも解消すると、見ない理由もなくなる。
「空流は順位表みないの?」
圭介がそう声をかけてくれたのをきっかけに、一緒に見に行く。
下のほうから見ていったら、案の定すぐに自分の名前を見つけた。
「やっぱり・・・」
予想はしていたけれど、がっかりした。
「空流、どうだったー?」
後ろから声をかけてきて、一緒に順位表をのぞきこんできたのは真志。
「予想通り・・かな」
苦笑いでそう告げるが、実は真志の名前と空流の名前は並んでた。
「あ、俺ぎりぎりで空流に負けた。あれ、でもスポ薦じゃないやつ俺の下に2人もいんじゃん。うん、俺的にはまあまあだな。勘が冴えてたみたいでよかった」
という真志の順位は30人中25位。決していいとは言えないけど。
「まあ、圭介はいつもどおりだよな」
さも当然のように、一番上に圭介の名前があった。
「・・・だよね」
空流も感心してその名前を眺める。
「はぁー・・・やってもやっても追いつかないってもどかしいなぁ・・・」
ため息をついて、自分の席へ戻った。帰り支度を始める。さすがにこの順位表を見た後では、勉強しなきゃという思いにいつもよりも強く囚われた。