小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|117ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

29

「でも、それなら清藍じゃなくってもって・・・ちょっとだけ思います・・・」
「清藍じゃないなら留年は確実なんでしょ?空流くんくらいの年の子にとっては年が1個違うっていうのは結構な違いなんじゃないの?」
確かにそれもいわれてみればその通りで・・・。
「でも・・・なんだか・・・」
煮え切らない空流の言葉に敦也が気付かれないように一つため息。
「空流くんは、清藍に行きたくないんじゃないの?」
「え?・・・いま、僕が清藍に行きたくないって、言いましたか?」
あまりの意外な言葉に聞き返す。
「そう。違う?」
考えてみるけれども、清藍に行きたくない理由なんてどこにもないはず。
「鷹島さんに迷惑をかけるとかそんなことじゃなくて。だって空流くんが鷹島さんの思うとおりになりたいなら迷わず頷いてるはずでしょ?」
ずはりと聞かれた疑問にすぐに答えはみつからなかった。
なぜすぐに頷かなかったか・・・。
もちろん、経済的な問題もあった。そこまで迷惑をかけるわけにはいかない、と。
けれども同時に、その誘いに頷くことが何より誠司を喜ばせたであろうことも空流にはわかっていたはずだった。
「・・・なんで、だろ・・・」
「それが自分のなかで見つかれば自然と答えが出るよ。行きたくない気持ちに打ち勝てないと結局俺みたいになっちゃうからね」
それだけ言って、敦也が席を立った。
「お茶のおかわりもってくるよ」
ドアが閉まると、部屋に一人で取り残された。
自分のなかのモヤモヤした『行きたくない気持ち』を探ってみる。
けれども答えはみつからなくて、もどかしい。

「敦也は基本的に荒療治なんだけど、大丈夫?」
ドアが開く音に気がつかなくて、振り返ると俊弥の姿。
「話は終ったみたいだね。今日も誠司がは外食みたいだから、よかったら俺たちと夕飯たべにいかない?」
時計をみると、もう7時近い。
「あ、こんな時間までお邪魔してしまってすみません」
「いいよ。どうせ俺と敦也しかいないし。それで、どうする?」
とても食事にいくような気分だったけれど、せっかくのお誘いに頷いておいた。
俊弥と会う機会も次はいつかわからない。
「ついでに家まで送るから」
礼をいって俊弥と一緒に部屋を出た。
「敦也、行くよ」
俊弥が声をかけると外出用の洋服に着替えた敦也が自分の部屋から出てくる。
そのまま3人で家を出て、俊弥の運転する車へ乗り込んだ。

後部座席に敦也と二人で座る。
「また、答えみつかってないみたいだね」
「はい」
俊弥には聞こえないようにささやいて、何を食べるかの相談が始まった。

空流が家に着いたのはもう10時近く。

「転校初日のイメージしてみれば、嫌でもわかるよ」

帰り際に敦也にそっと囁かれた。
マンションのエレベーターに乗りながら考えてみる。
意外なほどあっさりと原因はみつかった。

こんな中途半端な転校生をクラスメイトとして受け入れてもらえるだろうか。
いままでそこまで親しく付き合った人間もいない。
学校では話しても休日に一緒に出かけるような友達は作ったことがない・・・。

清藍に行って、上手くやっていけるのか・・・。

心配ごとの正体はそれ。
でもそれがはっきりしたことで、決心がついた。

部屋のドアにかぎはかかっていない。
誠司はもう帰ってきている。

「誠司さん、ただいま帰りました。遅くなってすみません」
リビングのドアを開けて、帰りを告げる。
リビングのソファで書類を読んでいた目を空流のほうへ向ける。
「いいえ。俊弥との食事は楽しかったですか?」
「はい、ご飯も美味しかったですし、色々話も聞けました」
「それは良かった」

話を切り出すなら、いまだ。
もう自分の残されている選択の時間は多くない。
誠司の隣に座って告げた。、
「誠司さん、清藍高校にいかせてください」
空流がそう切り出したのを誠司は信じられないといわんばかりにもう一度聞き返した。