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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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28

「病院で空流くんと鷹島さんが帰った後、めちゃくちゃ怒られた。当然だよね」
敦也は長い語りの最後をそうしめくくって、笑った。
「空流くんにしてみたらなんにせよ迷惑な話だろうけど」
「でも、敦也さんがいてくれたおかげで助かったこともいっぱいあります」
「食べ物とかね。ほんと樹ってそういうところまったく気がまわらないからさ」
食べ物以外にもたくさんいろいろあるけれど、それは今はいわないでおいた。
「俺も人のことなんていえないね・・・自分のために空流くんを傷つけたことに変わりはないから」
しばらく黙ったあとに言葉が続く。
「こんなこといえた立場じゃないのはよくわかってるけど、無事でよかった・・・ごめん・・・空流くんには本当に傷つけるようなことをした。でも、言い訳だけどあのときの樹にはそれが必要だった。あのとき俺まで樹を否定したら、今度はたぶん樹の心が壊れてしまってた・・・」
似たような立場の友達だからこそ、よくわかる。
生まれたときから兄弟と比べられ、否定され続けてきた立場。
敦也には俊弥がいた。自分を認めてくれる人。
でも樹には誰もいなかった。両親も兄弟も敵だった。
あのときの樹にとっては敦也がただ一人本音を言える人だった。
その1人に否定されたら、きっともう樹の心のバランスは崩れてしまう。
樹は頑張ってここまで来たのに・・・中学生の幼かったころの自分のようになってほしくはない。
だからあの時は、樹を最優先させた。

兄貴と鷹島さんが追ってきたときには、本気で助かったと思った。
兄貴にどう思われるのか考えると、ちょっとだけ怖かったけど。

「ごめん、なんて言って許される問題じゃない・・・。空流くんは俺たちを起訴することもできる。特に樹には色々な罪状をつきつけることもできるよ」
誘拐罪、それに対する幇助の罪。それから樹に対しては暴行も・・・。
「そんなこと、しません。樹さんのことも敦也さんのことも恨んだりはしてません・・・。結局何事もなかったわけですし、怪我をしたのも樹さんで・・・。それに、僕には誠司さんっていう人がいてくれた。それで充分です。誠司さんがいなかったら今ごろ生きていたかどうかもわからないし・・・」
「実は、心のどこかで空流くんなら、きっとそう言って赦してくれるんじゃないかって思ってた・・・。たぶん俺も含めてその言葉に甘えることになると思うんだろうけど、本当にごめん・・・」
真剣に頭を下げて謝った。
「樹を助けて空流くんを傷つけた分、今度はなんでも空流くんの力になるよ。鷹島さんと兄貴がいれば俺にできることなんてそうそうないとおもうけど」
その言葉を聞いて、こちらもそれに甘えようと思った。
その内容は、今空流の中で検討中の札がはってあるもの。
「じゃあ、少しだけ相談に乗ってもらってもいいですか?」
「俺でいいの?兄貴じゃなくても?」
「敦也さんがいいです・・・俊弥さんは誠司さんと同じくらい僕のことを甘やかしてくれるのでちょっと言いづらくて・・」
そう前置きをしてから、話し始めた。
先日誠司に進められた清藍高校のこと。
行かないかとすすめられているけれども、自分の力で高校にいきたいという気持ちもある。
それに私立の学校にいくのにはどうしたってお金がかかる。
アルバイトもできない。
どうするべきか自分ではわからない。

「空流くんは高校に行きたくないの?」
「それは・・もちろん行きたいです・・・けど・・」
「それなら、行けばいいって俺は思っちゃうけど。今しかできないことってあるよ・・・っていっても多分今の空流くんにはわからないと思うけど・・・」
敦也のいうことはその通りで素直に頷くしかない。
「例えばさ、空流くんは中学校にいってたとき色々思い出があると思うんだよね。楽しかった?」
「はい。嫌なこともありましたけど、楽しかったこともいっぱいあります」
「俺は中学校にいかなかったから、空流くんが持ってる中学校の思い出みたいなのは一切持ってないんだよ。もうこれって俺がいくら望んでも絶対にとりもどせないんだ」
軽い調子で敦也はいうけれど、なんて言葉を返したらいいのかわからなかった。
「だから、空流くんは高校に行くべきだとおもうね。そして鷹島さんの好意を無駄にしないことを約束できるなら・・・」
俺みたいに途中で辞めたりしたら全部無駄になるから。