君ト描ク青空ナ未来 --完結--
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中学には、それから卒業まで1度も登校できなかった。
高校は両親の理想どおりの学校になんかいけるわけもなかったが私立の進学校に入学。
俊弥の助けもあって入学式には登校できた。
進学校というのは、それなりに皆目指すものがあって入ってくるものらしい。
中学のころのように医者になる夢を公言することはなかったけれど、ずいぶんと気は楽でそれなりに上手く3年間過ごすことができた。
高3の冬、俊弥と同じ大学とまではいかなかったけれどなんとか医大に進路を決め、色々と調べていたときのこと。
今更ながら医学部は6年の勉強が必要ということを知った。
やけに俊弥が大学生の期間が長いような気がしてたことにようやく気がつく。
小6のときに大学1年だったから、今は・・・と数えていったら7年目であることに気がついた。
「なんで・・・」
不思議に思ってきいてみると俊弥は少しだけ困った顔を見せた。
「勉強する専門分野を少し変えたんだ。今までは外科だったんだけど何年か前に気分が変わってね」
「気分が変わったって・・今は何を勉強してるんだよ」
「精神病理学」
「それって・・・」
「心療内科にちょっと興味もっただけだよ」
その原因は明らかだった。
そのときになってようやく自分は俊弥の未来を犠牲にしたことに気がついた。
昔から目指していた外科医を諦めて、心療内科医への転換をはかっていたことなんてちっとも知らなかった。
それに、俊弥はずっと病院を継ぐことを考えてきたはずだ。
「うちの病院には、心療内科なんてない・・・」
「別に病院つぐために勉強してたわけじゃないし、めでたく敦也も医大に合格したんだから心配ないよ」
自分が目指してるのはもちろん外科医の専門。
でも、俊弥は自分のために外科医を諦めた・・・。
「敦也に全部かかってるんだから頑張ってよ」
「なんで・・・俺のためなんかに・・・」
「敦也の中2の事件があってから、俺なりに色々必死に考えた。あのとき敦也が何も話してくれなかったときどうすればいいのか、さっぱりわからなかった。しかも心療内科に通ってもちっとも良くならなかったのを見て、それなら俺が、って思ったんだ」
「でも、もう俺・・大丈夫だから・・・」
「うん、そうだけど。やっぱりいつまでたっても心配なんだよ」
結局、俊弥の研修医期間の終了と同時に仲原総合病院には新に心療内科が設置されることとなった。
それでも、俊弥のはらったものの大きさは、敦也にとっては重すぎた。
そして俊弥の自分の犠牲をいとわない姿勢はいつまでもかわらない。
これじゃあ、だめだ。
俊弥にとって敦也は弱くて俊弥がいないと何も出来ない人間でしかない。
もう決してそんなことはないのに・・・。
だから安心して自分のための道を俊弥には歩いて欲しい。
それなら、少し強硬な手段を使ってでも、兄貴なしで何かができることを証明すればいい。
丁度いいタイミングで大学の友だちからちょっとしたバイトをしないかという誘いがかかった。
その友達の名前は一ノ宮樹。自分と少しだけ境遇が似てて、危なっかしい奴。
性格がとげとげしくて、まるで中学生時代の自分をみてるよう。
誰も信じない、と心から思ってるようなそんな空気。
自分には兄がいてくれた。
樹にも兄はいるけれど、支えてくれるような人がきっと誰もいなかったのだろう。
いくら親戚の子といえども拉致監禁の幇助なんてごめんだったけど、放っておいたらどうなってしまうかわからない。
そんな気持ちが起こって、兄の自分の対する気持ちが少しだけわかった気がした。
「この件、敦也の兄貴も無関係じゃないみたいだけど?」
その一言で決心がついた。
兄と敵の位置に立ってみよう。
こっちが勝てば、自分はもう大丈夫なのだと俊弥に上手くわからせることができるかもしれない。
いい方法じゃないことくらいはわかってた。
けれど、協力するよ、という返事を返して作戦が始動した。
作品名:君ト描ク青空ナ未来 --完結-- 作家名:律姫 -ritsuki-