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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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24

「ここが俺の部屋。ちゃんと昨日片付けたから変な物は散らかってないと思うけど」
通されたのは、まあ部屋といえば、部屋。
「これ、一部屋って括るんですか?」
入ってすぐの空間には、リビングのようなL字型のソファのセットにテレビ。
奥の空間には、本棚や机やベッド。
「区切る扉とかはないから、いちおう一部屋だね」
「やっぱり俊弥さんも誠司さんと同じ世界の人なんですね・・・」
「どういうこと?」
「最初会ったときは誠司さんよりも庶民的な感情をわかってくれて安心した覚えがあるんですけど・・・」
「そりゃあ誠司よりはね。一応医者だから誠司よりは付き合いも広いし一般的な金銭感覚もあるよ。空流くんだってそろそろ誠司の金銭感覚に染まってきたんじゃないの?」
「そんなことありません。あのあたりの物価の高さには毎日驚いてます」
「確かにあのあたりの家賃の高さは卒倒ものだよね」
空流が部屋を見回すのをやめたのを見計らって、ソファをすすめた。
「さて、俺は敦也のこと呼んで来るよ。本当は敦也の部屋で話してもらうべきなんだろうけど、なにせ敦也の部屋はごちゃごちゃしてて汚いからさ」
そう言って俊弥がでていくと、部屋の中をあらためてみまわしてみる。
・・・こんな広い部屋なら所持品を全部散らかしてもごちゃごちゃはしそうにない・・。
こういうところで育つってどんな気持ちなんだろう。
お金持ちっていう言葉はあんまり好きじゃないけれど・・・困ることなんてなんもないんだろう。欲しい物かってもらえて、家事は家政婦さんがしてくれて。
でも、さっき俊弥さんがいってた、犠牲になるものってなんだろう。
お母さんの家事が下手とか、そんな簡単な問題じゃなさそうだったけど・・・。

「お待たせ」
部屋に入ってきたのはさっきと同じ調子の俊弥と、強張った顔をしてる敦也。
「敦也も座れば?」
言葉通りに敦也もソファへかける。
同時にノックがして、紅茶とお菓子が運ばれてきた。それを受け取ってソファの前のテーブルに置く。
「空流くん、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。いただきます」
一口だけ飲んで、そのまま置いた。
「敦也、どうするの?」
「わかってるよっ。二人で話すから、兄貴はどっかいってて」
不機嫌な口調で早口。
「はいはい。俺の部屋なんだけどね」
応じる俊弥は慣れたもので、ため息をつきつつも部屋から出て行った。

二人だけになった後も、敦也がなにも言い出さない。

「・・・あの」
「・・・あのさ」
話し出したタイミングが見事に一緒。
譲り合いの後に、発言力を得たのは敦也。
「空流君は、俺のお願い覚えてるかな?樹のところにいるときの。・・・俺は結局約束守れなかったけどさ」
「約束?」
「俺が鷹島さんの電話番号しらべてきてあげるよっていったやつ」
「あ・・そういえば」
「あの時、鷹島さんの電話番号を調べる代わりに俺が空流くんにお願いしたこと覚えてる?」

『樹のこと、何があっても恨まないであげて欲しい。できれば俺のこともかな』

「・・・覚えてます」
今考えると、敦也はあのころから樹の行動、そしてそのとき敦也自身がどうするのかを予測できていたのだ。
「結局約束は果たせなかったけどさ・・・俺のお願いだけきいてほしいなんていうのは無茶な話かな?」
「敦也さんが約束を果たせなかったのは不可抗力です。だから、僕は約束を守るべきなんだと思います。でも・・」
「でも?」
「理由が知りたいです。敦也さんがどうして樹さんに協力したのか、そのわけを聞かせてもらいたいとは思います。最初に言ってましたよね『ある人にあることをわからせるため』って。敦也さんは俊弥さんに何をわからせたかったんですか?」
「当然の疑問だよね」
遠くを見て、息をついた。
「実は、今日空流君をよんでもらったのはそれについて話さなきゃいけないことがあるって思ったからだよ。直接俺が行くのはちょっと気が引けたから俊弥に君をよびに行って貰った」

「結果からいうと、俊弥とのことは解決できたよ。でも、その内容を話すには少し昔話から始めないといけない」
そして、敦也の話が始まった。