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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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12

翌朝は平日。
空流が目を覚ますとそこに誠司はいなかった。
「あれ・・・」
寝ていた痕跡すらないということはずっと前にベッドを出たのだろう。
リビングへ顔をのぞかせるとスーツに着替え終わっている誠司の姿。
「空流?ずいぶん早起きですね」
夏の空はもう明るく輝いているけれどもまだ朝の6時をすぎたところ。
「誠司さんも。何時に起きたんですか?」
「私も起きてからシャワーを浴びて着替えただけです」
「お仕事、早いんですね」
「はい、でも7時すぎに出社をすれば間に合うので朝ごはんでも食べに行きましょうか」
普段、誠司には朝ごはんを食べる習慣がない。
一人暮らしを始めるようになってからは大抵コーヒー一杯で済ます。
自炊をすることなどないから冷蔵庫の中にはほぼドリンクしか入っていないが空流にまで朝ごはんをコーヒーにするというわけにはいかない。
外へモーニングを食べに出るというのはいい提案だと思ったのだが不思議そうな顔を返された。
「朝ごはんを、外で食べるんですか?」
きっとそういう習慣がないのだろう。
家族の誰かと住んでいればそんなことをする必要もない。
「ええ。朝から外出するのもいい気分になれます」
空流にはその誘いを断る理由もなく、着替えてでかけることとなった。

マンションの目の前のカフェのモーニングのセット。
サラダとパンと卵料理などが載ったプレートにコーヒーか紅茶がセット。
「美味しいです」
「それなら、良かった」
時間に気をつけながら朝食を楽しんで、カフェを後にした。
マンションに戻ると誠司は出社の準備。
「今日くらい、休みをとりたかったんですけどね」
「でも、誠司さんが休むといろんな人が困っちゃいます」
「そうですね」
笑顔で「大人」の意見を言う空流のことを微笑ましく思う。
「加川を呼んでおいたので昼ごろに来ると思います。それまで留守番をしていてもらえますか」
「はい。加川さんにまた会えるのは嬉しいです」
「きっと加川も嬉しいと思いますよ。あと家にあるものは自由に使っていいですからね」
そう言うと同時に、迎えにあがったという喜多川からの電話が鳴った。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
こんな平和な会話がこれから先もずっと続いていくと良い。
もちろん解決するべき問題は色々とあるけれど。


誠司を見送ってしばらく。
まだ朝の7時過ぎ。
することもなくて、テレビをつけてソファに座っていた。
朝のニュースを見るだけというのも退屈だけれど、それこそすることも見つからないのでソファに横になりながらぼうっとテレビを見る。

ふと自分の手を見ると、前は皮と骨だけだったのに肉がついたな、と思う。
ここ1ヶ月の出来事が頭をよぎった。
一ノ宮で過ごして、伊豆にいって、河口湖にいって、また一ノ宮へいって誠司さんのところへ帰ってきた。
母さんが死んだとき、もう僕には何もないと思った。
もう死んでもいいと思った。
でも誠司さんに助けてもらって。
また一ノ宮に連れて行かれたときにも誠司さんが助けに来てくれて。

なんか、助けに来てもらってばっかりだったなあ・・・。

考えに耽っているとだんだんと眠気が襲ってきた。
昨日はすごく疲れていたのに4時間少ししか寝ていない。
いつの間にか、テレビの音がすごく遠くなっていった。

意識がない中で、何か暖かいものが身体にかかったのは覚えてる。

良い匂いに気がついて目が覚めた。
「・・あれ・・・寝てた・・・」
身体を起こすと身体に掛かっていたタオルケットが床に落ちた。
「おはようございます、空流さま」
そう声をかけられるのは、すごく久しぶりだけれども振り返らなくても誰だかわかった。
「お久しぶりです」
振り返るとそこにはもちろん加川の姿。