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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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11

膝を抱いてソファにすわっている空流の姿。
「・・・なんだか、眠れなくて・・・」
そう言って空流が微笑む。
「暑かったですか?それなら空調を・・・」
的外れだとわかっていつつも、沈着さを取り戻すために尋ねる。
「そうじゃないんです。暑さになんて慣れてますから。少し窓をあければ充分です」
「では・・・」
「さっきの、ことで・・・」
いったい空流から何を言われるのかと、柄にもなく緊張している。
空流の隣に誠司も腰を落とし、次の言葉を待った。
けれども、次の言葉はなかなか出てこない。
何と言っていいものかきっと悩んでいるのだろう。
そんなに、悩んで欲しくて伝えたわけではない。
「空流、そんなに悩まないで」
「でも・・」
「困らせたかったわけではないんです。今はただ、あなたに傍にいて欲しいと思っているだけですから」
だから、ここに居てくれるという答えを出してくれたことで充分なのだと。
伝えるけれども、それはきちんと伝わっているのだろうか。
そう思っていることも事実ではある。けれどもその言葉だけが真実でないことをこの黒い瞳に見透かされているような気がしてならない。

「違うんです」
困っていたり、悩んでいたりしたわけではない、とその口が告げる。
「自分もちゃんと言わないとって思って・・・」
必死に言葉をつむぎだそうとする空流の姿を見て、余計な口を挟むのをやめた。
何かを伝えようと必死に考えているのだろう。
無理をしなくて良い、と先回りをしたい一方で紡ぎだされる言葉を聞きたくもある。

「僕も、誠司さんと同じ気持ちです」

言われた意味が一瞬わからなかった。
「樹さんのところにいるとき、敦也さんに聞かれたんです。僕が誠司さんのことをどう思ってるのかって」
そこから空流が言った言葉を信じられない思いで聴いた。

傍にいてほしい、と。
毎日帰りが遅くなっても少しだけ顔を見せてくれるだけでも幸せだと。

「それは、本当ですか?」
つむがれる言葉を信じられない思いで聞いた。

それは母親や兄のように思っているのとも違う。
なんだかよくわからない感情なのだけれども、それでも自分は誠司のことが好きだと伝えるその言葉に嬉しさを感じないわけがない。

そして、そんなことを伝えられて何もせずにいられるわけがなかった。
肩を抱き寄せて、唇を合わせた。
軽く触れるだけの短いキス。

「すみません、あまりにも嬉しくて」
当の本人は何が起こったのかを頭で処理しきれていない様子。
「空流?」
呼びかけてこっちを向かせると、いきなり顔が真っ赤になった。
その顔を見られたくないのか自分の膝に突っ伏して顔を見せないようにしている。
「ご、ごめんなさいっ」
「なんで謝るんですか」
「だって・・・何か・・・慣れてないのが丸わかりで・・・」
空流からは見えないけれども誠司の顔に笑みが浮かんだ。
全く予想もしていないことを考えている空流に毎回驚かされる。
少なくとも嫌がられてはいないことに安堵の息をついて、話を続けた。
「慣れてたら困ります」
「なんでですか?」
「今まであなたの唇に触れた人に対して妬けてくるからですね」
「そんな恥ずかしいこと言わないでください」
少しむくれた顔になって、やっと空流が顔をあげた。
「でも、事実ですから」
もう一度だけ唇を合わせるだけのキスをして、離れた。
「何をするつもりもないと言ったのに、嘘になってしまいました」
自嘲気味にそう微笑んでソファから立ち上がった。
時計をみるともう真夜中。
「疲れてるでしょう?今度こそちゃんと休んで」
「はい。でも誠司さんも一緒に」
やれやれと息をついて、一緒に寝室へ入った。
冷静に眠れるわけもなく、空流が眠ったのを見計らって寝室を抜け出した。