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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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 それは、花笠カオリがその日に罪を犯す事を知ってたからだ。否、その日、殺人姫は花笠カオリの傍らにいた。
 つまり、現場に落ちていたボタンは「あいつ」のもので、「あいつ」こそが真の殺人姫なのである、という考え方が、最も理にかなっている、と僕は憶測した。
 花笠カオリは一日限りの殺人姫だった。そして、真の殺人姫もまた、この学校にいる。
 そして花笠カオリの、僕の知る限りの交友関係と、赤い魂の色の特性とを考えると、五条五月と染崎明日香。この二人のうちのどちらかが、「あいつ」なのではないかと推測される。
 推測は良いとして、問題は、赤い魂が、本当に「殺人を犯した色」なのかという事だ。
 僕が知りたいのは、はっきり言ってしまえば、それだけなのだ。確かに花笠さんの魂を変貌させてしまうには、殺人というのは理にかなっているが、もしかすると僕の知らない、全く違う、彼女の色を変貌させてしまう程のイベントがあったのかもしれない。今となっては知り得ない事で、誰もその可能性を否定出来ない。まぁ、誰に言うわけでもないから、誰にも否定されないのは当たり前だけど。
 それを確定するには、五条さんや染崎さんが、殺人を犯した事をある、ということを証明しなければいけないのだが、いきなり「あなたは殺人を犯した事がありますか?」などと聞いてもまともな答えが返ってくるとは思えない。せいぜい殴り返されるのが関の山だ。
 だから僕は、彼女達に対して探りを入れようと、そうしようとしているわけだ。彼女達が殺人の罪を犯した事があるのか、若しくは、「あいつ」なのか、それが知りたい。

 僕は僕の知的欲求で、また人を汚そうとしていた。
 そしてその結果が、若木町連続殺人事件の真相を知る事であることも、この時は考えもしなかった。

「五条さん」
 声をかけた。どうにか、彼女が「あいつ」であるか、それとも、人を殺した事があるのかを知りたかった。
 彼女はゆっくりと振り向いた後、
「…何」
 とゆっくり聞いてきた。
 さて、何、と聞かれても。困ったことに何を言うべきか何も考えてなかった。授業中に考える筈が、その実何にも考えていなかった。さっきの憶測ばかりしていたせいで、結局放課後まで何を言うべきかを思い至っていなかったのだ。
「…………」
「…………」
 やばい。沈黙が心に痛い。ついでに焦燥感とかも駆り立てられて来た。
 五条さんの頭が左に、僕から見たら右に傾いて来た。ゆっくり。動作の遅さに助けられたか、多少言葉を選ぶ思考時間が出来た。
「…えっとですね」
 全然意味なかった。何も思いつかない。なんか敬語になってるし。
「…何」
 なんなんでしょうね、って言いそうになった、お前が何なんだ、否僕が何なんだ。
「…えっと、あの」
 変な汗が出てきた。僕の焦りは頂点に達し、ふと思いついた言葉を口にした。
「五条さんの家に行ってもいいかな?」
 最悪のチョイスだった。今この時間この時分はメモリーから消し去りたいログのナンバーワンに輝いた。ていうか掃除の為に残ってる生徒達に聞かれた。すげえこっちを見てひそひそ話してる。気持ち悪いっていうかムズ痒いっていうか恥ずかしいっていうか、いっそ爆発してこの世から消滅したかった。
「…いいよ」
 いいのかよ!せっかく記憶から消すイベント確定だったのに、これじゃ無理だ!
 あと何で君たちは拍手とかしてるのかな。とても恥ずかしいから止めてくれないかな。