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神か犬

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「あなたは僕の神様です」
 僕がそう言うとあなたは目を大きく見開きながら、振り向いてくれたのでした。
「僕はあなたの犬です。あなたは僕の神様です」
 もう一度言いました。僕の思いの全てをこめて。
 あなたは僕の首に手を伸ばしました。紫色の首輪につながれた僕の首。
「綺麗な首だったのに。こんな風にしやがって」
 それはお互いさまなのです。僕だってあなたの首が好きだった。ううん、あなたの全てが好きなのです。そう、今でも。紫色のあなたでも。いや違う、紫色のあなただからこそ。
「本当に、ばかだね」
 そう言いながらあなたは泣いて。泣いて泣いて泣き崩れ、僕の前にひざまずくのでした。
 僕はどうしていいのか分からずに、そっとあなたの頭を撫でました。
 あなたが一瞬ビクリと体を震わせたので、僕も怒られるかと思って瞬間的に手を引きました。でもあなたからは怒られなかったので、僕はもう一度あなたの頭を撫でました。
 今度はあなたは何も反応を示さなかったので、僕はひたすらに、ただひたすらにあなたの頭を撫で続けたのです。
作品名:神か犬 作家名:有馬音文