神か犬
次の日、あなたは僕の前へと現れました。
僕の前に現れたあなたは、僕と同じように紫色の痣がその首をぐるりと取り巻いていました。やっぱりです。やっぱり僕とあなたは繋がっているのです。あなたも昨日――
「違うよ、これは自分でやったんじゃない。やるもんか、そんな事」
あなたは僕から目をそらして言うのです。では何故? どうしてそんな痣が?
「私は女王様なんかじゃない。本当の私は奴隷なのさ。昨日は金持ちのオッサンの窒息趣味に付き合わされたんだ」
そう言ってあなたは自嘲気味に笑いました。笑うあなたの手首にも紫色がありました。
「僕は犬です」
あなたの手を取り言いました。
「僕はあなたの犬です」
「飼い主を置いて出て行く犬があるか、バカ。あんたは犬じゃない」
あなたが僕の手を振り払う。どうして? 僕は……僕は……!
「私が欲しいのは犬か神様。それ以外の男なんていらない」
僕に背を向けたまま、あなたは言葉を紡ぎ続けるので。
「私の言う事を何でも聞く従順な犬か、私が地面を這いつくばって崇める神か、どちらかしかいらない。あんたは犬じゃない。でも神でもない。私はあんたなんか尊敬できない。敬えない。だからオシマイ。私の事なんかとっとと忘れな。それがお互いのためだ」
僕はばかです。あほうです。世の中のいろんな事を知りません。世の中のいろんな人の気持ちをわかりません。だからあなたに敬って貰う事など到底できません。
でも、それでも――