神か犬
それからの僕は、どこか大きなお屋敷に迎え入れられて綺麗なお洋服を着せられました。赤い紐は否応なく外されて、今は僕のポケットの中にしまわれています。
僕の周りにはいつも大勢の人がいます。僕は嫌だ。僕は苦しい。僕は悲しい。僕は辛い。
夜遅く、誰も見ていないのを見計らって僕はあなたの赤い紐を取り出し、首に巻きつけました。あなたもきっと僕と同じですよね? だってこれは僕とあなたの運命の赤なんだもの。
僕はギュッと紐を持つ腕に力を込め、めいいっぱいに締めあげました。僕の首を。
「何をなさっているのです!」
すぐさま数人の黒い服の人達が僕を取り囲みました。誰も見ていないと思ったのに。僕はばかだから、人から隠れる事すら出来ないのでしょうか。
僕は泣きました。涙を零して哀願しました。「あの人に会わせて下さい」僕の言葉に周りの人々は困ったような顔を見合せていました。それでももう一度、今度は大きな声で言いました。「会わせて下さい! あの人に!」