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律姫 -ritsuki-
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僕らの日常風景

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5月は学力テストの季節



要求不満や…。

5月のはじめは学力テスト。
真面目ゆえに、勉強も完璧にこなしたい、という織に尚樹は何も言わずに学力テストが終るまで待った。




やっとテストが終わった、と嘉山織はシャーペンを置いて、息をついた。
けれども、気持ちはまったく上がらない。
それは、一番最後の教科が国語で、やっぱり古典が全然できなかったから。
こんなことじゃあ、全然だめなのに・・。どうしても、苦手が克服できない。
でも、いつもよりは答案が埋まった気がする。そう思える事だけが救いだ。
テストを頑張るためにここしばらく、尚樹と寄り道をしたりしていない。
やっと今日は、久しぶりに彼とゆっくり話すことができそうだった。




テストが終わって週があけた月曜日の六時間目。
天気は曇り。今にも雨が降りそうな、どんよりとした空気。こんな日に国語のテストが返ってくるなんて、嫌がらせかと疑いたくなる。
「江藤、岡部」
国語教師に次々と名前が呼ばれていく。
「加藤、嘉山」
ついに来た。
先生から答案用紙を受け取って自分の席へもどって、ゆっくり答案を開く。
平均点は53.6。
でもそこに赤く大きく書かれた点数は…平均点を下回っていた。
いくらなんでも、これは酷すぎる…。
今回は結構頑張れたと思ったのに…。


…こんな事じゃ全然なのに…。


授業が終わって、生徒会室へ行く。今は誰にも会いたくなかったし、うちの生徒でいっぱいの駅までの道を歩くのも嫌だった。
柿崎はすぐに部活だし、生徒会の三年生は7時間授業がある日だから今はこの場所は確実に一人になれる。
三年生の授業が終わらないうちに、そして駅までの道にうちの生徒がいなくなったあたりを見計らって帰ろう。

椅子に座って頭を横にして机に突っ伏すと、新聞部がつくってる学校新聞が目に入った。たぶん発行の許可を生徒会に求めたものだろう。特集はうちの学校の生徒自慢。
手に取ってみてみると、新聞の一面いっぱいに大きな写真、しかも見なれた顔だ。
スポーツ新聞のごとく、大きな文字で「生徒会長・松下司」と派手なロゴで書いてある。
そしてみんなの前で演説をしているときの松下先輩の大きな写真。その下の方には部活中の先輩の写真とか、普通に友達と喋ってる先輩の写真が小さく載っている。
一面全部、松下先輩だ。
左下の方に、新聞部の人が書いた記事がまとめてあった。

『言わずと知れた、我が校の生徒会長。フェンシング部の主将。とっても強いんです。そして成績もなんとオール5!!英語科の高橋先生からも「生徒の鏡だ」と絶賛のお言葉をいただきました。さすが生徒会長ですね。顔よし、頭よし、運動神経もバツグン!しかも現在付き合ってる人はいないそうです!こんな生徒会長のご寵愛を賜った学園生活、憧れですよね〜』

顔よし…頭よし…運動神経よし…か。

ページをめくると、知らない人がならんでて、さらにその次のページには、なんと岡本先輩と尚樹さんの写真があった。ページを6つに割ってあって、その中の一つづつだけれど。

『生徒会副会長のお方です。運がよければ松下生徒会長と一緒に歩いているところを見られるかも。柔道部の主将でとっても強いんです!成績はほとんど5。精悍・堅実な男のカガミ!』

『大阪弁のオールマイティな王子サマ。明るい性格、優しい笑顔、まさに王子!生徒会の二人とも仲良しで幼なじみなんて言う噂も。おはようございますと声を掛けると「おはよおさん」と手を上げて返してくれますよ、お試しあれ♪』

新聞部の特集のメインは三年生だけれど、最後のページには僕と同じ学年の人も乗ってた。寺崎君と野崎君と安山君・・?みんな知らない人だ。
サッカーの申し子、化学の貴公子、バレーボールの星…とよく一人一人にそんなキャッチフレーズを思い付くものだ。

新聞を閉じると、自然と一面の松下先輩のところへと目が戻る。
「はぁ…。」

『さすが生徒会長』か。

その言葉が、重い。




「なぁ、司、織のこと見んかった?」
「見なかったけど?」
放課後に織の姿を探しているのは尚樹。
二年の教室はもぬけの殻。生徒会室にも誰もいない。
一緒に帰ろうと約束してたわけではないし、今日は二年の方が終わる時間が一時間早いから織が先に帰ってても別になんも不自然ではないけれど・・・。
こんな天気の日は気分がよくないから、せめて織と一緒に帰りたかったけれど残念といいながら昇降口へ向かった。

作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-