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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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僕らの日常風景

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「ありがとうございました」
さっき助けたばかりの一年生が、お礼をいって生徒会室から出て行く。
「これからは気ぃつけや〜」
尚樹さんが送り出して、僕は報告書の作成にとりかかる。
加害者、3年サッカー部の谷口、三浦、横山。
被害者は1年2組の東有紀(アズマ・ユウキ)。
「入学したばっかりの一年は無防備やからなあ〜。先輩から呼び出されると何の疑いもなく呼び出されてしまうねんな〜」
「そうですねぇ。松下先輩にその辺相談してみましょう。先生と掛け合って、一年生のクラスで呼び出しには出来るだけ応じないようにという注意をしてもらえるかもしれません」
「司なぁ、いつ部活引退やっけ?」
「えっと、フェンシング部は、5月初旬に引退試合ですね。届け出が出てます」
なんとなく沈黙が流れる。
お互いいいたい事はあるが、なかなか切り出せないでいる状態だ。
尚樹さんが椅子から立って、窓の方へと歩いて行く。
窓に両手を着いて、何回か深呼吸したあと、僕の方へと百八十度回転した。
「なあ、織。俺はずっと織と付き合いたいっておもっとるけど、織はどう思ってる?」
返事をするのに、椅子と窓の距離じゃあ遠すぎると思ったから尚樹さんへと近づく。
人と話すときは日本人は30センチの距離が適当ってどっかで見た気がしなくもないから、その位まで近寄ってみると意外と近くて、顔をちょっと上に向けないと尚樹さんの目はしっかり見えなかった。
「僕は・・・なんか付き合うとかよくわからないんですけど・・・。でも、尚樹さんのことはすごく好きです」
尚樹さんが肩に手を回して僕を引き寄せた。
「俺も、織のこと大好きやで」
「…ありがとうございます。」
体が急に離されたと思ったら、唇に一瞬尚樹さんの唇が触れた。
「なっ・・!」
「1ヶ月半過ぎたんやから、もう手出しもええやろ?めでたく友だち以上になれたわけやし」
顔が真っ赤になるのを止められなかった。




「はい、定例会はじめまーす。」
松下先輩がいつも通りに定例会を始める。
「待って下さいよ!先輩。」
止めたのは、柿崎。
「どしたの?」
「えっと、どちら様ですか!?」
と手を向けるのは尚樹さん。
「あれ?柿崎しらなかったんだっけ?この人がずっと見回り手伝ってくれたんだよ。」
松下先輩が解説。
「それは失礼しました」
素直に柿崎が謝罪する。
「例の件の被害報告から行こうか。せっかく尚樹がいるんだしね。岡本」
「被害なし。あくまで生徒会に届いてるものではだけどな。何やら取り締まり委員会が設置されたらしいという噂だが?」
それは、尚樹さんのせいだ。絶対に。
「変な委員会の噂はともかく、やっぱり名前をチェックされる事の効果は絶大だね。とりあえず被害が減ってよかったよ。もうすこし、見回りを続けてもらって様子を見よう。尚樹、嘉山、よろしく」
はい、と僕が返事をすると同時に、ほーい、という尚樹さんの返事もあがる。
それから、5月に行われる生徒総会のことを話し合って、定例会は終了となった。
「岡本、柿崎、ちょっと先に教室帰っててもらえるかな?俺はその二人に話があるもんで」
なにやら、嫌な予感がする。
その予感は全員に走ったらしく、岡本先輩と柿崎はそそくさと生徒会室を出ていった。
「司、なんか怒ってへん?」
「いや、怒ってはいないよ。もちろん二人が上手く行ってよかったと思ってるよ?しかしねえ、生徒会室のいちゃつくのは慎むようにしてもらえるとありがたいんだけどな」
「司、お前盗み聞きしとってんな?」
「盗み聞きとは人聞きが悪い。生徒会室にたまには様子を見に行こうと思って部活の休憩時間を抜け出してきたら、たまたま中からそんな会話が聞こえたんでね」
「…すみませんでした」
聞かれてたなんて、恥ずかしい…。
「あと、尚樹。くれぐれもミイラ取りがミイラにならないようにね」
それだけ言って、松下先輩は生徒会室を出ていった。
「…今のってどういう意味ですか?」
「…まあつまりは、付き合い始めたのはいいが、くれぐれも校内でするなよ、って意味やろ」

また顔が赤くなるのを止められなかった。
5時間目が始まるまでに、治らなかったらどうしてくれるんだろう。


FIN


こんな感じの短編連作が、尚樹たちの卒業まで続きます。
このな二人をもし気に入っていただけましたら、是非つづきも読んでやってくださいvv

表紙絵はいつもお世話になっております、チカちゃんがかいてくれました。
普段はほわっとした女の子イラストライターさんです。
pixivですが、是非のぞいてみてください!
http://www.pixiv.net/member.php?id=857598

作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-