小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

僕らの日常風景

INDEX|2ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 


見回り3日目。・・すでに嫌気がさしてきている。
正直な感想としては、こんなに多いなんて思わなかった。
事件性のあるものを見つけるのはまぁいいとしよう。しかし…なんというか、恋人同士でやってる人たちを発見すると、どうも気が滅入る。
いくら規則のためとはいえ、どう見てもこっちが悪者だ。
今日もバカップル一組と遭遇。今日のはかなりしつこかった。
まったく、付き合うなら付き合うでいいけど、ちゃんと規則を守って欲しい。
今日はもうさっさと帰ろう。

空いている電車の乗って、席に座ると、とドアが閉まる警告音がする。
ドアが閉まり始めるのと同時に、うちの学校の生徒が駆け込んできた。クラス章に学年カラーの赤が入っているから2年生だろう。
こっちに歩いてきたかと思うと、数少ない空いている席である僕の右となりに座った。

何もすることなく座っていると、だんだん眠くなってきた。
カクカクとさっきから右に倒れている。
隣の人に迷惑がかかってるけれど・・止めることができないくらい眠い・・。
右となりの人に寄りかかって、電車が揺れては一瞬が目が覚めて傾きを直そうとするが、またすぐに倒れてしまう…繰り返しだ。
電車が単調に走って、また体がどんどん倒れて行く。
ガタン、と電車が揺れて、一瞬目が覚めかけて、傾きをなおそうとすると、右となりの人の肩によりかかっている頭をおさえられた。
「ええで、肩貸したるから眠りぃや」
いえ、そんなわけには…と思いつつも、体はいうことを聞いてくれなかった。
眠すぎて頭が朦朧としていた・・ってのもあると思う。

「なぁ自分、ここ降りる駅ちゃう?」
肩を揺すられて、目を覚ます。
慌てて外を見ると、もう電車が僕の降車駅のホームに止まって、ドアが開いたところ。
「あぁ!」
そして慌てて隣の人を見る。学校の駅から隣は変わっておらず、うちの学校の2年生だ。
「あの、ありがとうございます!すみませんでした!!お礼は今度また学校で!」
そう言って、急いで電車を降りる。ギリギリでドアに挟まれなかった。

あ!!お礼するとかいったくせに名前聞き忘れた…。
来週の定例会で、先輩たちに聞いてみよう。



翌週、火曜の定例会。
「で、どうよ?嘉山」
全員がそろい、お茶を入れたところで、柿崎が尋ねてくる。
「…なんだか、もう言いたくもないです」
特にバカップルの規則違反が多いところとか。
「松下、被害届けの方はどうだ?」
「うーん、確実に減ってるね。嘉山が止めた分だけじゃなくて、『生徒会の人間が見まわってる』っていう噂の効力が強いみたいな感じ」
確実に効果はあるみたいで・・その結果だけが救いだ。
「嘉山、お前自身には、何もなかったわけだよな?」
「はい。なんとか」
「そりゃあよかった。これからも続けてもらって大丈夫かな?」
「悪いな、嘉山。お前一人に押し付けてるみたいで」
「いえ、とんでもないです」
先輩たちだって、僕らの出来ない仕事をいっぱいやってくれているのだから、そんなのお互い様だ。
「それじゃあ、今週はもう終わり。あとは個人作業で、何かあったら報告すること」
「はい!それじゃ、俺部活のほうのミーティングでてきまーす!」
柿崎が勢いよく生徒会室を飛び出していった。
先輩たちと僕だけ生徒会室に残る。あ、これはあの人の事を聞く良いチャンスだ。
「あ、そうだ!先輩」
「なんだ?」
「えっと、多分2年生だと思うんですけど、大阪訛りっぽくて、背が高いひとっています?すごいいい人だと思うんですけど」
先輩二人の顔に、明らかに疑問的な表情が浮かぶ。
「やっぱり、知りませんか?」
僕の問いに、今度は考え込む顔だ。
「…いや、いることはいるんだが・・、というか、大阪弁話してるやるなんて一人しか思い当たらないが…」
「いい人、っていう点にものすごい疑問を感じるよね」
松下先輩のなにやら失礼なことばに岡本先輩も頷いている。
「なんで嘉山はそいつのこと探してるわけ?」
そう聞かれのでこの間の一件をおおまかに話した。
「…本当に、あいつなのか?」
「嘉山、金取られたりはしなかったよね?」
「はい」
「ますます、疑わしくなってきたね」
「いや、でも松下、考えられないことはないぞ。あいつが無条件にやさしい相手っていうのがいるだろう?」
「…なるほどね。あ、それはもしかしたら使えるかも。ま、とりあえず、呼んでみる?まだ昼休みあるし」
松下先輩が言うと、ポケットから携帯を取り出して、電話をかけはじめた。
電話番号を知っているほど仲が良いらしい。
「あ、もしもし?ちょっと今から生徒会室に来てよ。……うん、じゃあ」
短い会話をして、すぐに携帯電話をしまう。
「今からくるってさ」
「わざわざ呼び出してもらったりして、すみません」
「いいよ、俺もちょっと頼みたいことあるし。嘉山、俺があいつと交渉してるとき、決して口を出しちゃいけないよ?」

作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-