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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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僕らの日常風景

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4月は僕らの出会いの季節



「…やめてください…っ」
3人の上級生に囲まれ、恐怖に顔をゆがめているのは今年この学校に入ったばかりの新入生。
「だってよー?どうするー?谷口」
「お前ら、そこで俺がやめろって言って素直にやめんのかよ」
「まっさかー。ちょっと聞いてみただけだって」
「顔も奇麗だしな〜。上玉上玉」
「早くやろうぜ」
と取り囲んでいる上級生の一人が言い、全員が下品な笑い声を上げる。
それとほぼ同じにバーン、と音がしそうな勢いでドアが開けらた。

「はい、どーもー。校内不純同性交遊取り締まり委員会でーす。」
言いながら、ドアに寄りかかるのは背の高い男子生徒。長い足を交差させて腕を組んでいる。
「サッカー部の部室で午後3時54分に発見、と。」
取り締まり委員会、と名乗った生徒の後ろにいたもう一人の生徒が、言ったままの内容をメモ帳に書き記す。
「な、なんだてめぇら!!」
「ふざけんなよ!!」
「どっちがふざけてんねん。校内での性行為、しかも無理矢理とは良い度胸やなぁ。そう思わん?織(オリ)」
「でも尚樹(ナオキ)さんもちょっと調子に乗りすぎですよ。勝手に取り締まり委員会なんて名前までつけて」
「なんや、冷たいなぁ。まぁ、ええわ。とりあえず、被害者救出」
奥で呆然としていた一年生を引き寄せて、織と呼ばれたもう一人に引き渡す。
「大丈夫?」
織がやさしげな口調で聞きながら、彼の肩に手を乗せる。
「服は自分で直せるかな?」
問うて、一年生が頷いたのを見届けると、サッカー部員たちの方に向き直った。
「さて、覚悟できてんやろな?サッカー部3年の谷口、三浦、横山」
「げ、なんで俺らの名前・・」
「俺はなあ、仕事の都合上、全校生徒の顔は全部頭にはいってんねん!」
「サッカー部の谷口さん三浦さん横山さん・・っと。サッカー部には後程生徒会の方から処罰が行きますので覚悟しといて下さいねー」
「ほな、織、一年、行くで」


どうして僕が、この大阪訛りの先輩とこんな事をしているのか。
それは1ヶ月半前に話を溯らせなければいけない。



その頃、僕、嘉山織(カヤマ・オリ)はまだ1年生だった。
そして生徒会役員であるから、毎週火曜日の昼休みは定例会へ行く。
「本日の議題は、来たるべき新年度の校内での強姦事件多発についてでーす。」
生徒会室で行われる役員4名での定例会の司会は当時2年生の先輩がやっていた。
お弁当を食べながらやっているので、その議題が出た瞬間、司会の先輩以外の全員がお弁当を吹き出しそうになる。
「…なんで、そんな議題だよ?松下」
顔を引き攣らせながら尋ねるのは、同じ二年の岡本先輩。
「毎年、新年度って被害とどけが多いらしいんだよねー。新入生狙いのバカが多発するせいだと思うけど。っていうかそもそも校内でそういうことするの禁止ってみんな忘れてるよね」
「というか、校内でそういうことするなんてこと事態理解できないな」
「まぁそりゃそうだけど」
ちょっとアバウトなところがある司会の松下司(マツシタ・ツカサ)先輩と、真面目という言葉が似合う岡本孝志(オカモト・タカシ)先輩。生徒会の2年生はこのふたりだけだけど、なかなかのベストペアだと思う。
「禁止ってこと、もっと大々的に知らせたほうがいいと思います」
先輩たちに言うのは、僕と同じ一年の柿崎祐(カキザキ・ユウ)。
「だな。で、問題はそれをどうやるかなわけだが・・」
岡本先輩が言って、全員が黙り込む。今の生徒会にアイディアを出す人間がいないというのはちょっとした問題だ。
「嘉山、どうよ?」
なぜかというと、誰もアイディアを出す人間がいないと、必ず僕にお鉢が回ってくる。
「えっと・・、放課後に校内を巡視するのというのはどうでしょう?問題が起こっているのはほとんど放課後なわけですし、放課後に校内の人気のない場所を巡視するだけでも結構被害が減るんじゃあ?」
「良い案だな。どうだ、松下、柿崎。」
いつの間にか、司会の役目が松下先輩から岡本先輩へとうつっている。
「俺は良いと思うよ」
「あ、俺も良いと思います」
松下先輩に続いて柿崎。
「でもさー、誰が見回りするの?俺と岡本はまだ部活やってるし、部活が休みの日も予備校行くからできないし。柿崎は休みの日なんて盆と正月しかない地獄の水泳部だろ?」
この意見に、しばらく誰も何も言わない。
「それって、つまり…見回りをするにしても出来るのは僕だけ、ってコトですか・・?」
「そういうことに、なるな。」
眉間を押さえながら、岡本先輩。
「どうするかね」
…なにが?
「えっと、松下先輩、何がどうする、なんですか?」
僕の質問に、全員がえ?という顔をしてこっちを見る。
「一応僕の案は了承されたわけですよね?」
「まぁ、そうなんだけど・・」
「出来る人が僕しかいないなら、僕がやるしかないじゃないですか?」
なにを当たり前のことを言ってるのかと自分では思うのだが、
「しかしなあ、嘉山。世の中には八つ当たりするバカが結構多いんだぞ?」
岡本先輩、それはどういう・・?
「そうだぞー、嘉山。いくらお前がわざわざ呼び出されて襲われるほど可愛くなくたって、一人で見回りなんかしたらミイラ取りがミイラに襲われちゃう可能性だってあるんだぞー?」
柿崎・・さりげなく失礼な奴め。まあ、可愛いなんて言われたいとは思わないけど。
「生徒会の腕章つけてれば、大丈夫ですよ。生徒会の人間に手出す人はそうそう多くないでしょうし」
「まぁ、そうだろうねー。特に部活に入ってる奴等は予算の関係とかで生徒会には手出せないからね」
「そうですよ。まぁ、一人でもなんとかなります」

結局、とりあえず試験的に一週間やってみて、来週の定例会で報告、被害の検証をすることになった。

作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-