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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
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僕らの日常風景

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説明会当日。
集まった一年生は4人。
一学年で生徒会に入れるのは3人。4人も集まれば上々だろう。
コップを僕の分と尚樹さんの分を含めて6つだして、お茶を入れる。
こんな特権があるのか〜と関心する顔が一年生たちに浮かぶ。
生徒会の仕事を説明して、やる気が萎えないといいけれど。

雰囲気が重くならないようにと、座談会のような座り位置で、説明をしていった。
でもやっぱ一人で全部やらなきゃいけないとなると、緊張する。
それを始まる前に尚樹さんにいったら「ま、なんかあったら俺が助けたるから安心しいや」といってくれたから、大分気持ちは楽になったけれど。

生徒会の仕事は、多岐に渡る。その陳列された仕事内容をみるだけで、逃げる人間が多数。
仕事内容は派手じゃないから目立たないけれど、根っこの部分で生徒会の権力があるっていうのはこの忙しさに裏打ちされている。
普段の事務作業に加えて、季節や行事のごとの仕事も数え切れない。
生徒からの苦情処理みたいな仕事もあって、実はそれが一番辛いかも。

そんなことを一年生に説明し終わると、生徒会活動記録のファイルを渡す。
毎週一回、定例会の日に当番が生徒会室のパソコンで記録をつけるから本当はパソコンの中にしかデータはないのだけれど、それじゃあまりにも見にくいだろうと思ってプリントアウトしたものだ。
「とりあえずこれで説明会は終わりです。でも何か質問とかあったら自由に言ってください。そのまま活動記録見ててもらっても構いませんし、何か他に見たいものがあったら言ってくださいね」
説明は終わった。
「お疲れ〜」
と尚樹さんが言ってくれる。
やっと緊張の糸が切れて、ふぅ、とため息をつきそうになった。いけない、いけない。

「あのー、松下先輩は来ないんですかー?」
一人がつまらなさそうに聞く。
「これは次期生徒会長主催の会なので」
そういうと、その子がすぐに、席を立つ。
「じゃ、俺は失礼しまーす」
「はい、また何かあったら、きてください」
生徒会室のドアのところまで送っていく。
軽く一礼をして、部屋を出て行った。
「司目当てやってんな〜」
と尚樹さんが呟く。
松下先輩目当てか・・、そういう一年生もいて当然だ。この間の学校新聞に大きく取り上げられたわけだし。

あとの3人はまだ楽しそうに活動記録を見てる。
僕と岡本先輩は真面目に記録を書くけど、松下先輩と柿崎は結構面白おかしく書くからな・・。

落ち着いて今残っている3人の子の顔を見てみると彼らのうち一人はどっかで見たことあるような気がする。
背がちっちゃくて、すずめの尻尾くらいの長さの髪をチョンとうしろで縛ってて、可愛らしい感じの・・・。
「えっと・・どっかで会わなかった?」
彼の方を見てたら、目があってしまったので聞いてみる。
僕の聞き方に隣で尚樹さんが「いきなりナンパかいな・・」と声を立てずに笑ってる。
「はい、一度お会いしてます。嘉山織先輩に・・えっとすみません、上の名前は知らないんですけれども、尚樹先輩ですよね」
と彼が答える。
僕の名前は説明会告知ポスターに欠いてあったから、分かってもいいとして、尚樹さんの名前まで覚えてるって事はやっぱり会ってるんだ・・どこだっけ・・・。思い出せそうなのに、思い出せない・・・。
「よく覚えてんねんなー、東有紀クン?」
「覚えててくださったんですか?嬉しいです〜!」
と彼が可愛く微笑む。
「なんや、織。まだ思い出せないんか?いつやったか、サッカー部の部室に救出活動に行ったことあったやろ?そんときの被害者やて」
そういえば・・そんなことがあった気も。
でも助けた子の名前なんて覚えてない。人間のこととなると記憶力が爆発する人とは一緒にしないで欲しい・・・。
「あの時は、ありがとうございました。先輩たちにあこがれて、俺、生徒会に入ろうと思ったんです!」
彼の見かけと『俺』という一人称がなんとなくミスマッチで可愛い。
「まあ、あれはちょっと特殊な仕事やったけどな」
僕達が話しているのをきいて、他の二人も活動記録から顔を上げる。
「そういえば、説明会とか言っておきながら全然自己紹介もしてませんでした。遅ばせながら、僕は嘉山織といいます」
「あ、えっと、俺は、東有紀(あずまゆうき)です!」
とさっきの子が慌てて名前を言う。
彼の隣を見ると、そこに座ってるのは、『綺麗』が人間になったかのような子。
いや、彼くらいの身長になるともう『子』というのは失礼かもしれない。
すっと背が高くて、細くて、整った顔。色素の薄い目と髪。そして意志の強そうな目。この目があるから、こんな容姿でもか弱そうな印象を与えない。立ち振る舞いも堂々としていて、目を奪われる。
「川口雅人です」
名前と、それから字を説明してもらって、納得がいく。『雅』の字にふさわしい容姿だ。
「あぁ、新聞部の『我が校の生徒自慢1年生版』に載ってたなぁ。川口は・・えっと、確か『新入生一の美男子』せやろ?」
と尚樹さんが彼に聞く。・・僕はそんなものの存在さえ知らなかった。
「恐れ多くも、そう呼ばれてるみたいですね」
と言って彼がちょっと微笑む。小説とかでたまに見る『花が咲くような微笑み』の意味が分かった気がする。
「あ、俺は柚木康介(ゆぎ・こうすけ)です」
と、最後の子は威勢良く、手を上げながら自己紹介をした。
彼を見て、尚樹さんがちょっと笑う。
「あ、もしかして、先輩俺の部活知ってます?」
尚樹さんが笑ったのに気がついたのか、そう聞く。
「もちろん、知っとる」
「嘉山先輩は知りませんよね?」
その問いに頷いて、尚樹さんの方を見る。部活がどうしたんだろう・・・。
「実は俺、松下先輩の回し者でしたー!」
と尚樹さんと僕に向かって言う。
「あ、もしかしてフェンシング部?」
「どうせ司のことやから、しっかりやってるかどうか見て来いとか言ったんやろ?」
「その通りでっす!」
と彼が頷くのに、一番驚いた顔をしてるのは、東君。
「あ、あの、尚樹先輩と、その松下先輩って方はどういうご関係なんですか?」
彼が恐る恐るといった風に聞く。
「どういうもなにも、ただの幼馴染。今は俺が引っ越してしまったから近くには住んでへんけど」
「だから、名前で呼んでるんですね」
彼が安心したように微笑む。
なんか嫌な予感が走ったのは、気のせいだろうか・・?

作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-