僕らの日常風景
とりあえず、僕の今日の目標は、生徒会室を綺麗にする事。
見慣れているから、自分達ではあまり感じないが、結構ごちゃごちゃしている。
歴代の先輩たちが置いていった教科書や、生徒会役員の私物なんかも結構ごろごろと転がってる。
あと、プリント類がなんといっても散らかりすぎだ。
定例会で使わないテーブルなんかプリントの山になってる。
誰も掃除する人がいないから、僕がたまにやったりはしているけど、毎日できるわけじゃないからやっぱり汚い。
「すみません、尚樹さん、手伝わせちゃって」
なんと尚樹さんにまで手伝わせてしまってるのだ。
「ええって。どうせ暇やし」
「でも、いいんですよ?僕の仕事なわけですし、座っててもらって」
「ええって、一生懸命働いてる人の横で俺だけゆっくりしてるのも気分悪いからなぁ」
「なんなら先帰ってもらっても・・・」
と僕が言うのに、尚樹さんがため息をつく。
「なぁ、自分、俺に手伝ってもらうの嫌なんちゃう?それならそうと邪魔って言ってくれた方がありがたいねんけどなあ」
「そんなことはないです!」
むしろ、いなくなられたらなられたで、やる気を失ってしまうような・・・。
「・・・すみません、手伝ってくれて、ありがとうございます」
「せや、最初っからその一言でええんや。それはそうと・・もう一人の2年の役員」
「柿崎ですか?」
「あぁ、そや。そいつはどしたん?」
「部活です。しかも水泳部」
「水泳部!?・・よくもそんなけったいな部に入った奴が生徒会に・・・」
確かに、思ってみればお盆と正月しか休みがない水泳部にはいったのに、よくも生徒会にまで入ろうと思ったものだ。
「あの部は・・めっちゃ怖いで?」
「え?」
「縦社会も縦社会やって。まず平日の休むことは許されやんし、早退もダメ、遅刻なんかもっての他やて」
「ちなみに途中で部活抜け出しちゃったりなんかするのは・・?」
「そんな勇気のある奴は見たことないけど・・、俺の知り合いが2年の頃、ほんのちょっと遅刻しただけでその日は一日中一人でプールサイドの掃除やったって言ってたな・・」
恐ろしい・・・。
定例会に遅刻したら10円を募金箱(生徒会のお茶代)に寄付しなきゃいけない世界とはワケが違う。
そんな部活を抜け出してまで謝りにきてくれるなんて・・。
準備と片づけ程度のことをするのが一人じゃ大変だと思ったのが申し訳なくなりそうだ。
「怖いですね・・」
「生徒会説明会の日って、そいつどっちに出るって?」
「部活休んで、こっちにくるって言ってたんですけど、その日試合のタイムとる日だって決まっちゃったらしくて・・・、結局部活に出るみたいです」
「それが正解やろな。にしても、織、そしたら一人で全部やる事になるんとちゃう?大丈夫なん?」
「なんとかなると思います」
「俺でよければ手伝ったるで?説明はできんけど、準備と片づけくらいなら手伝えると思うし。生徒会役員とちゃう人間がいたらあかん?」
「いえ、そんなことはないですけど・・」
「じゃあ決定やな、手伝ったる」
あぁ、もう・・なにかあるたびに思ってる気がするけど、どうしてそんなにいい人なんですか・・。
「すみません、掃除まで手伝わせちゃってるのに」
「ええよ。ま、そのうち夜にたっぷり返してもらう予定やし」
と、耳元で言われる。
「えっ・・!?」
夜って・・・えっと・・・。な、何すればいいんだろう・・?
テーブルのプリントの山をファイルに整理しながら入れて、いらないものは捨てる。わからないものは、松下先輩に聞くためにクリアファイルにまとめる。
床の掃除は尚樹さんにお任せして、月曜日の説明会に一年生にお茶を入れるためコップの数を数えたりとか、生徒会役員の私物をロッカーに整理して入れたりとか、僕しか分からない仕事は自分でなんとかしなきゃいけない。
下校時刻の6時までにはなんとかしないと・・・。
コップを洗うための水道とかも、台の部分がすこし茶色くなってたりとかして、汚い。
ここもなんとかしなければいけない、新しい生徒会役員獲得のために。
あぁ、こんなことなら普段からもっと掃除を心がけて置けばよかった。
キーンコーンカーンコーン…
全校生徒が問答無用で下校しなければいけない6時のチャイムが鳴ったのは全て片付いたのと同時だった。
「めっちゃ綺麗になったやん。むちゃくちゃ真面目に仕事しとる生徒会に見えるで?」
「見える、じゃなくてちゃんと仕事してます」
「でもこの部屋、結構私的に使われてるんやんか。俺がここにいるのが良い例やし」
「多少の職権乱用くらい、いいじゃないですか。その分大変な仕事してます」
「せやなぁ。ま、とりあえず掃除おわってよかったわ、下駄箱混まんうちに帰ろか?」
「はい」
作品名:僕らの日常風景 作家名:律姫 -ritsuki-