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 生きているのだ、この星は今この瞬間も。そしてきっと、これからも。
「私は死にません。たとえあなたを叱り付ける平手も、ともに語り合う言葉も、こうして人を抱きしめるこの身さえ失ったとしても。私はこの星そのものです。はるか遠く太陽の周りを回り続けて、あなたがさらに成長して再びこの地にやってくる日を楽しみにしています。
 だから安心して飛び立って。あなたはまだ若い。いくらでも新しい生き方を選べます。大切な人が何人もこれからできるでしょう。きっとその中にはあなたと人生を共にする人もいるはずです。そしていつか、かつてのあなたの両親のように生まれたばかりの赤ん坊を連れて、この星に遊びに来て。その姿を褒め称える拍手も、喜びを歌う言葉も、再会のハグもキスもできないけれど、私は必ずここに、いつまでも変わらぬままに、この星にいるから。」
 涙が出た。凍りきった心が溶けて、零れてしまったかのように。自分は独りではなかった。どんなに遠く離れても、この広大な宇宙の中には、いつまでも変わらずに見守ってくれている存在がいたのだ。幼い少女の姿をした、けれど誰よりも強くやさしい守護者が、自分にはいるのだ。これから先もずっと。
 そうしたまま、ただ時だけが流れて、トンボはゆっくりと体を離した。
「もう、大丈夫だ。泣き言は、言わないよ。やれるだけ、やってみるさ。」
 赤くなった目をぶっきらぼうに拭うとそう言って立ち上がる。目には彼本来の輝きが戻りだしている。
「そう。なら、安心ですね。」
 プルートは、その目を見て心底ほっとした笑顔でそう言った。
「送ります、搭乗口まで。」
 トンボは大きなドラムバッグ一つを肩にかけて、歩き出す。

作品名:プラネットホーム 作家名:空創中毒