伝説の……
F:free――タダじゃあない
あわあわあわ。やっちゃった……。今のわたしなら、世界中の誰にもドジと早とちりでは負ける気がしない。
わたしのダイヤモンドが粉々っ! もう、最初からわたしにくれるって言ってくれればいいのに。まぁ、ちょっと作戦が強引だったかな。
……いやいやいや、そんなことじゃなくて! ヒドイこと、しちゃったなぁ。そうだよね、いくら幼馴染で命の恩人なわたしでも許されることとそうでないことって、あるよね。ハルくんのあんなに寂しそうな顔見るの、初めてかも。
あの指輪事件から、以前みたく毎朝隣から玄関まで迎えに来てくれなくなったし、昼休みに一緒にお弁当を食べてくれなくなったし、話しかけても答えてくれないし、休みの日に映画にも動物園にも美術館にも誘ってくれなくなっちゃった。
わたし、もう、どうしていいかわからないよ。
タダほど高いものは無いって、テトラ爺はよく言うけど、それだったら今までタダだった、大切なものを取り戻すには、どうしたらいいのかなぁ。
枕元にある『カブトムシたち』っていうハルくんの手作りテープを流してみる。あぁ、ハルくんもこんなよくわからない気分だったから、よくわからない洋楽を聞いてたのかなぁ。話したい、なぁ。