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伝説の……

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E:equal――引いて足したら同じだろうか


 いい加減に過去の清算をしたいと思った俺は、贈り物ですべてを水に流してもらおう(実際に水に流された俺からしたら忌々しい言葉だ)と決めた。
 贈り物といったら、当然、宝石が最強だろう。その中でも宝石の女王、ダイヤモンドならば俺の命を救ってくれた恩に多少は釣り合うのではないか? アイツの誕生日、四月だし。
 そうと決めた俺は決然とバイトに励み、苦節三ヶ月の果てにダイヤモンドを手に入れた。給料三ヶ月分だ。深い意味はない。小さくても立派なダイヤの指輪だ。本当に深い意味はない。別に、渡すときに言う言葉を徹夜で考えていたから寝不足なわけではない。さりげなく左手の薬指にはめてやろうだなんて、0.01カラット程も考えちゃいない。
 しかし、散々ドラマチックで涙なみだの展開を妄想していた俺でも、この展開は予想できなかった。
 完全に、予想外の展開だ。
 今、目の前の床で、指輪のダイヤは粉々だ。
 どこかで見たことのある若い女性店員が、買ったばかりのダイヤを不自然極まりない落とし方で床に叩きつけ、箱から中身が飛び出したと思ったら、ハンマーを持った見慣れすぎた顔が「あ~れ~」なんてわざとらしい声を上げながらしっかりと狙いすました目でダイヤを叩き割った。見事過ぎる腕前は何なんだ。それ以上に、「花火を買ったつもりがダイナマイトでした」というような展開は何なんだ。
 俺は真っ白になった頭でとりあえず集められるだけの欠片を集めると、どこかやりきった表情の元・命の恩人にそのまま渡してやった。「え……? わ、わ、わたしに???」
 大きく目を見開くと、顔をうつむけて押し黙る。まぁ、自分でやったことなら、諦めもつくだろう。
 俺のハートは取り返しがつかないくらい割れてしまったわけだが。MDのランダム再生ボタンを押すと『LET IT BE』が流れ出す。ビートルズは、わかってるな。

作品名:伝説の…… 作家名:空創中毒