伝説の……
V:victory――勝者は高らかに
マイクの前に進む。もうすでに、俺の歌を聞く前から、グランドは赤く染まっていた。夕焼けだ。明け方から始まった戦いが夕日の中で終わるっていうのはなかなか悪くない。
隣で皆に手を振り、笑顔を振りまくライバル。
俺は、一曲歌った。
一昔前の、恥ずかしすぎるラブソングというやつだ。夕日のおかげで、俺の真っ赤な顔が目立たないのは有り難かった。
恥ずかしいくらいに、熱唱した。周りの声も聞こえないくらいに。ただひとりだけ、隣にいる人のことだけを考えて歌った。
息も絶え絶えに歌いきると、グランドからはまばらな拍手が聞こえた。すぐ隣からは、やけに大きな拍手が。
俺はマイクが入っているのも気にせずに言った。アキの無邪気に澄んだ瞳を真っ直ぐに見ながら。
「俺はアキのことが好きだ。水溜まりもプールも海も湖も温泉も風呂も駄目な俺だけど、結婚しよう!」