伝説の……
T:tea――お茶でも飲んで忘れたら
わたしたちの決闘は、ついに全校生徒の見守る中、決着の時を迎えていた。
決闘の前にきちんと決めておくのを忘れてたけど、いつの間にか負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くってことになってた。
そうか、勝ったらハル君に好きな人の名前を全校生徒の前で叫ばせることもできるんだ。そうすれば、告白の結果までその場で分かるし、一石二鳥ね。
グランドには全校生徒に加えて街中の野次馬と暇人まで集まってきて、もはやお祭り騒ぎだ。ちょうど部活も禁止だし、普段は部活一色の体育会系まで揃ってる。
運営のクラスメイトたちは屋台を出したり、朝礼台で漫才をやって場を温めたりと、抜かりがない。装飾や音響には、わたしの頼れる親友からの指示が次々と出ている。
主役に祭り上げられたわたしたちはというと、今やクラスメイトに飾り付けられて、芸能人ばりの格好で朝礼台裏の控えテントに座って待機している。テントは、担任が校長の許可をもぎ取って立てたって。
温かいお茶が、わたしたち二人の前で湯気を立てている。相変わらず、ハル君は熱っぽい顔で目を合わせてはくれない。決闘中だもんね。
夏真っ盛りとはいえ、熱いお茶はありがたい。お茶は、本番前の張り詰めた神経を優しくほぐしてくれるのだ。
「あなたのその姿、宝石にして家に飾りたいくらいよ」
「あっちゃん、ロックにいきな!」
親友が最後の声援をくれる。頷きだけで応える。
先攻はわたし。もちろんコイントスで決まった。
「絶対に負けない」
彼にそう言い残して、わたしは朝礼台ステージに登り、マイクの前に立った。
深く、息を吸う。心の底から、言葉をすくいあげる。
――歌う。